受験界の最高峰「東京大学理科三類」、通称・理三。そこを卒業して医師として活躍する人は、医学界の“常識”に囚われないそれぞれの健康哲学を持っている。ベストセラー『80歳の壁』の著者・和田秀樹医師は、歳を取るなかで大事なのは「いかに楽をして健康でいるか」と説く。そこには自身の受験勉強に通じる哲学があった。
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私は東大医学部で学びはしましたが、決して「天才」ではありませんでした。受験では努力はしましたが、難しい塾に通ったり、先生に言われた勉強法を真面目にやったりしたのではありません。自分で戦略を立てて、勉強法を工夫したんです。
その勉強法とは、「少しでも楽をする方法」を考えることでした。440点満点で290点を取れば受かるなら、150点までは落とせるという発想です。あまりにも不得手なものは捨て、易しい問題から点を取る。邪道と言われても、数学なら解法を丸暗記する。同じ結果を出すなら、少しでも楽なほうがいい。
私は戦略や工夫を重視します。受験で覚えた内容が社会で役に立つ機会は少ないですが、身につけた勉強のやり方、工夫は絶対に役に立ちます。
私が言いたいのは、老後の健康寿命を延ばすにも、そのような「工夫」が必要だということです。この考え方は、歳を取れば取るほど、重要度が増していく。様々な能力が落ちていく高齢者ほど、上手に楽をすることが必要になるからです。
例えば歳を取って足腰の筋力が落ちた時、昔と同じように歩きたかったら、どうするか。
筋力向上のために「運動」で鍛えるのはいいけど、ずっと続けられることではないでしょう。足腰の筋力を保つことも心がけながら、杖を使うとか、恥ずかしがらずに歩行の補助器具を使うことも大切です。
自動車の運転も同じです。運転が不安だからと、単純に控えたりするのではなく、これまで以上に安全な運転ができるように工夫するのです。
そのための方法はたくさんある。同乗者に横に乗ってもらうとか、遠出はしないで慣れた道だけ運転するとか。雨の日に運転しないと決めるのもそう。最終的には自動運転に頼るという発想など工夫と戦略です。