10月以降、自転車の交通違反の取り締まりが一段と強化されている。警視庁によると、今年9月末までに都内で発生した交通事故の約半数が自転車に関係したもの。今後、悪質な違反については、刑事処分の対象となる「赤切符」交付など厳罰に処されるケースが増えるとみられている。
通勤通学で多くの人や車が行き交う都内某所の踏切に、「ピピピーッ!」と、けたたましい警笛の音が響いた。
「おはようございます。何で止められたか分かりますよね」(警察官)
「あぁ、踏切くぐっちゃって……。気を付けます」(男性)
「あ、今回はキップ切ることになるんで。ちょっとお時間頂けますか?」(警察官)
「え、注意だけじゃないの……?」(男性)
遮断機が下り始めた「開かずの踏切」を強引に自転車で突破した男性が摘発された瞬間だった。取り締まりを受けた50代男性に話を聞いた。
「違反をしたのは事実だけど、自転車で赤切符を切られるとは思わなかった。お巡りさんに聞いたら、この先、指定日時に警視庁の分室に出頭することになるという。検察官の取り調べ、略式命令、罰金がなんとか……とも言っていたね。なんか、大ごとになりそうで動揺しています」
免許がなくても乗れる自転車は、その気軽さゆえに「違反をしても重大事故や処罰には繋がらないだろう」と考えがちだが、交通事故被害に詳しい弁護士法人心の石井浩一弁護士はこう指摘する。
「自転車による死亡・重傷事故が毎年多発し、死亡・重傷事故全体に占める自転車事故の割合も増加傾向にあることなどから、警察は違反の取り締まり強化に踏み切りました。『信号無視』『一時不停止』『右側通行』『徐行せず歩道を通行』した場合を含め、悪質なケースは取り締まりの対象となり3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処されることがあります」
前述した男性のケースでは、「赤切符」交付後に郵送か電話で出頭命令があり、指定日時に警視庁の分室(墨田分室もしくは立川分室)に出向くことになる。当日は検察官による取り調べの後、審理が進められるが、場合によっては“前科”が付くこともあるという。
「違反行為の悪質性や、それにより生じた結果(人身事故など)の大きさ、本人の反省の態度なども考慮され、1回目の赤切符で必ずしも罰金刑などの刑罰が科されるとは限りません。ただし、たとえ略式起訴でも罰金刑となれば、通常の刑事裁判と同様に前科となります」(石井弁護士)