旧統一教会との関係をめぐって「記憶がない」「事務所にも記録がない」とシラを切り続け、「嘘が背広を着て歩いている」と評された山際大志郎・経済再生相がついに辞任した。岸田文雄・首相は直前まで、「予算委員会で質疑を受けている最中だ。与野党の質問に丁寧に答えてもらう」と更迭を否定し続けてきたが、その予算委員会の集中審議が終わったタイミングでクビを切ったのだ。自民党国対幹部はこう言う。
「総理は国民に公約した電気・ガス料金の負担軽減策などを盛り込んだ経済対策を10月28日に閣議決定し、国会に補正予算案を提出する。補正予算の審議で答弁に立つのは経済再生大臣の役割だから、いま山際を辞めさせておかないと、臨時国会の会期中ずっと山際追及一色になってしまう」
更迭はギリギリのタイミングだった。だが、“トカゲの尻尾切り”では岸田首相は逃げ切れそうにない。むしろ、山際氏という「弾よけ」がなくなることで、国民の批判と野党の追及のホコ先が首相の任命責任に向かうのは確実だ。
岸田首相の誤算と責任は旧統一教会問題の“疑惑の本丸”の1人だった山際氏を内閣改造で留任させたことにある。
安倍晋三・元首相の銃撃事件をきっかけに旧統一教会批判が高まると、岸田首相は同教団との「絶縁」を宣言して9月の予定だった内閣改造を8月初めに1か月前倒し、閣僚などに教団との接点を報告させたうえで、萩生田光一・前経産相をはじめ関係のあった大臣、副大臣など14人を交代させて“火消し”を急いだ。
ところが、山際氏については教団との関係を知りながら、経済対策の要となる経済再生相に留任させた。
岸田首相自身、10月18日の衆院予算委員会でそのことを認めている。山際氏から内閣改造前に教団のアフリカセミナー出席などについて報告があったかを質問され、こう答えたのだ。
「さまざまな関係があることは私自身認識していた。今後関係を絶ってもらわなければならない」
なぜ、改造で山際氏を交代させておかなかったのか。それとも、切れない事情があったのか。
山際氏は岸田首相の側近というわけではなく、派閥も違う。もともとは旧山崎派に所属し、同じ神奈川選出の甘利明・前幹事長のグループ「さいこう日本」に参加。以来、甘利氏の側近中の側近として行動を伴にしてきた。