肝臓、すい臓、腎臓など、初期の症状が自覚しにくい“沈黙の臓器”は少なくない。気づいたときにはもう手遅れになっていた……といったことがないように、早く症状に気づくことが重要だ。
肝臓で作られた胆汁は脂肪の消化を助ける役割を持つが、それを一時的にためておくみぞおちに位置する「胆のう」も、自覚症状が出にくい臓器の1つだ。四谷メディカルキューブ外科部長の梅澤昭子さんが解説する。
「胆汁を蓄える胆のうはまさに“沈黙の臓器”。特に胆のうがんは気づきにくい。初期症状はなく、周囲にがんが広がってはじめて、黄疸や痛みが出てきます。
また、胆のうがんは結石ができる『胆石症』を合併している人が半数以上です。そのため、胆石の疑いで検査をした結果、がんが見つかることもあります」
がんとは異なり、胆石であれば痛みの自覚症状が出る。
「個人差はありますが、胃のあたりから背中側に刺すような痛みを感じる人が多い。胃痛に近い鈍痛を訴えるケースも多く、胃の痛みで病院に行ったら見つかったという人や、逆流性食道炎だと診断されたけれど症状が改善せず、調べたら胆石だったという人もいる。胃の不調を感じることがあれば胆のうの病気を疑ってもいい」(梅澤さん・以下同)
胆のうがんの原因には、結石による慢性的な炎症や胆汁成分の変化が関係していると考えられている。
「特に40代以上の女性は注意してほしい。胆石症は女性に多く、40才以上になると患者数が増加します。加えて肥満や出産経験が多い人もリスクが高いことも明らかになっています。
胆石の原因の1つは胆汁中にコレステロールの結晶ができること。結晶がくっつきあって塊になると胆石になり、胆のうの出口や胆管に詰まると痛みが出ます。そのため、急激に体重を落とすようなダイエットはコレステロールの結晶ができやすいので避けた方がいい。
アルコールや動物性脂肪の過剰摂取もリスクです。消化器官がしっかり動いていれば、多少コレステロールの結晶ができたとしても詰まらずに流れるため、規則正しい生活をして腸内環境を改善するのも効果的です」
肝臓、すい臓、胆のう、そして子宮や卵巣など、病魔に蝕まれても兆候として表れづらい“沈黙の臓器”はその声を聞くのにコツがいる。専門家のアドバイスをもとに、自身の体と向き合い、SOSに耳を澄ましてほしい。