ライフ

料理コラムニスト・山本ゆりさんが「ジワッとホクホクした気持ちが続く」と語る漫画

料理コラムニストの山本ゆりさんが『トラとミケ』の魅力を語った

料理コラムニストの山本ゆりさんが『トラとミケ』の魅力を語った(単行本4巻より。久しぶりに名古屋に戻った中村君を囲んでの高校の同窓会。実はこのときすでに…)

 女性セブンの人気月イチ連載漫画『トラとミケ』の単行本4巻が発売になった。トラとミケが営む“どて煮屋”に集うお客の人生模様を描いた本作の魅力について、料理コラムニストの山本ゆりさんが綴る。

 * * *
 また友達に全力でオススメしてしまう漫画を知ってしまった……。むしろ今までなぜ知らなかったのだろう。今回4巻を読ませて頂き、貪るように1~3巻を読み、まさに「トラとミケ」のお店から出てきたような、ジワッと温かくホクホクした気持ちが続いている。甘い名古屋のおみその匂いも髪についていると思う。

 本誌の読者の方にすれば何を今さらだと思うが、予備知識ゼロで開いた瞬間イラストに衝撃を受けた。表紙の雰囲気、猫が主役ということから、ゆるくてほんわかした、あまり線のない絵の想像をしていたのだ。全然違いました。風景、小物、生き物の1つ1つがなんて丁寧で精巧で美しく、それなのになんて可愛くて味のある絵なのだろう。季節の移り変わり、天気や時間帯、気温や空気の匂いまで伝わる光と影の色使いが映画を観ているようである。雨上がりのマンホールに群がるスズメ、川沿いの住宅街にある狭い公園、花火に照らされる店前の3人、古い銭湯にあるやたらうるさいマッサージチェアや乗るとガシャンと重りが動く音がする体重計……絵を見ただけでこの漫画を買って良かったと思えるほど、ノスタルジーでたまらなく愛しい。……アカン絵が好きすぎて絵の話だけで終わってしまうから自粛するわ。でも最後に1個だけ言わせて……金木犀にやどる野鳥めっちゃ好き。

 本書はところどころに食べ物が登場する。「トラとミケ」の看板商品どて煮、串カツ、三吉の助六、メグミのお弁当(野菜の多さや色合い、詰め方で奥さんの性格がわかる気がする)、新じゃがの煮っころがし、冷ややっこ(薬味の多さが嬉しい)、きしめんと天むす、お風呂上がりのコーヒー牛乳(最高)、〆サバ、ひなあられに桜餅……季節や心情にピタリと合うご飯が本当においしそうで、湯気や香りがここまで届きそうだ。

 さて4巻は同級生のお葬式から始まる。昔の仲間が集まり、その中のひとり、中村君が癌で先が長くないことがわかる。いつも明るく爽やかでみんなの相談役。パーフェクトな人間に見えるけれど、裏では人知れず涙を流し、死に怯える姿があった。そんな彼が故郷に戻って仲間たちと過ごし、学校でいじめに遭うリコちゃんの相談に乗るうちに、少しずつ変わっていく。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
【独自】「弟がやったことだと思えない…」中居正広氏“最愛の実兄”が独白30分 中居氏が語っていた「僕はもう一回、2人の兄と両親の家族5人で住んでみたい」
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新田恵利(左)と渡辺美奈代があの頃の思い出を振り返る
新田恵利×渡辺美奈代「おニャン子クラブ40周年」記念対談 新田「文化祭と体育祭を混ぜたような感覚でひたすら楽しかった」、渡辺「ツアーも修学旅行みたいなノリ」
週刊ポスト
放送時間を拡大しているフジテレビの『めざましテレビ』(番組公式HPより)
日テレ『ZIP!』とフジ『めざまし』、朝の“8時またぎ”をめぐるバトルがスタート!早くも見えた戦略の違い
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
公的年金は「社会的扶養」「国民の共同連帯」「所得再分配機能」(写真提供/イメージマート)
《まるで借りパク》政府の基礎年金(国民年金)の底上げ案 財源として厚生年金を流用するのは「目的外使用」ではないのか、受給額が年間8万円以上減額も
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン