70歳以上の免許保有者は1195万人に達し、年々増加の一途を辿っている(2020年「交通安全白書」)。一方で、高齢ドライバーによる大きな事故はあとを絶たない。親に「免許返納してほしい」と願う人も多いはずだが、親と子の関係だけに一筋縄ではいかない。親の免許返納を考えるどこの家庭にも生じ得る問題である。
『免許返納セラピー』の監修者で九州大学大学院教授の志堂寺和則氏が語る。
「一口に高齢の運転者と言っても人によって身体能力や性格などに個人差があり、何を基準に免許返納を進めるかの線引きが難しい。子供が“とりあえず返納を勧めてみるか”と漠然と説得すると、相手が頑固になるだけです。まずは親の現時点での運転能力をチェックすることが求められます」
現在、75歳以上のドライバーは免許更新時に「認知機能検査」が義務づけられるが、この検査は加齢による運転能力の低下を調べる実技試験ではない。
そのため「家族が車に同乗して、運転能力をきちんと見極めること」が重要になってくるという。
別表は親の免許返納を勧めたほうがよいか判断する15項目のチェックポイントだ。核となるのは「身体能力低下」「安全確認能力低下」「認知機能低下」の3つである。
「まず確認したいのは、親が乗っている車の車体に擦った傷がついていないかです。あちこち擦ったりぶつけたりするのは、身体能力の低下で運転が下手になったからで、危険運転の徴候と言えます。
特にドライバーが確認しやすい運転席側に傷がある場合はかなり危ない。急発進や急ブレーキが多く、助手席に乗った際に、親の運転の乗り心地が悪くなった場合も、繊細なペダル操作ができなくなったことを示しています」(志堂寺氏)