タレントのフワちゃんがプロレスデビューしたことが話題を呼んでいる。昔も今もプロレスに参戦する女性芸能人は多いが、その理由についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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30日放送の『行列のできる相談所』(日本テレビ系)は、フワちゃんのプロレスデビューを特集。5か月に及ぶ壮絶な練習に密着した様子や、人気団体・スターダムで行われたデビュー戦などを放送しました。長期にわたるプロジェクトである上に、芸能人屈指のプロレス通である有田哲平さんをゲスト解説に迎えるなど、力の入った企画であることがうかがえました。
女性芸能人のプロレス参戦と言えば、古くは昭和の『スター誕生』(日本テレビ系)出身のマッハ文朱さんとアイドル歌手から転身したミミ萩原さん。平成に入ってからも、グラビアアイドルのインリン・オブ・ジョイトイさんや愛川ゆず季さん、筋肉アイドルの才木玲佳さん、映画コメンテーターのLiLiCoさん、フリーアナウンサーの脊山麻理子さん、タレントの鈴木奈々さんらがプロレスに挑みました。
また、2017年にはドラマ『豆腐プロレス』(テレビ朝日系)で、AKB48の松井珠理奈さん、宮脇咲良さん、横山由依さん、須田亜香里さん、向井地美音さんら主要メンバーが本格的なプロレスに挑戦。ドラマだけに留まらず、本物のプロレス興行を行って驚かせました。
現在もタレントの赤井沙希さん、SKE48の荒井優希さん、女優の長野じゅりあさん、グラビアアイドルの上福ゆきさん、LinQの元アイドル伊藤麻希さんなどが現役レスラーとして活躍しています。
なぜ女性芸能人たちは、真逆の活動に見えるプロレスに挑戦するのでしょうか。
プロレスの試合と芸能活動の類似点
女性芸能人がプロレスに挑戦する理由は、主に「仕事」と「憧れ」の2つ。
まず仕事という点でのプロレス挑戦には、「話題性を生み出せる」「ギャップを見せられる」「イメージチェンジを図れる」「表現力を磨ける」「ファン層を広げられる」などのチャンスがあります。
プロレスラーは芸能人以上に「どんなキャラクターなのかが重要」と言われる職業。顔や体、言葉や仕草などで、自己表現することや、観客へのアピールが求められます。また、もともとプロレスの試合には、アイドルのライブや女優の舞台に似た要素があることから、「プロレスラーに向いている」と言われてオファーを受ける女性芸能人は少なくありません。
さらに、キュートまたはセクシーなコスチューム、凜々しい姿と痛がる姿などが魅力的に見えることもポイントの1つ。たとえばアイドルなら、ふだんの衣装とは異なるイメージのコスチュームや、苦悶の表情を見せることがファンサービスにつながります。かつて『めちゃイケ』(フジテレビ系)の人気企画「めちゃイケ女子プロレス」に現役アイドルなどがこぞって出演していたのも、これらのメリットがあるからでした。
もう1つプロレス参戦のメリットとしてあげておきたいのは、人柄や生き様、挫折や成長、屈辱と栄冠などのストーリー性で魅了できること。リング上の姿を通して、一途さや頑張り、悔しさや痛み、歓喜や失望などを観客に感情移入をしてもらいやすく、他の活動では得られない熱い声援を得ることができます。
たとえば、「芸能活動がふるわない」「大きな失敗してしまった」などの芸能人がプロレスに挑み、生き生きとした姿を見せて成功を勝ち取るという流れは定番のストーリー。実際、AKB48のプロレス挑戦は人気が下降気味になりはじめたころであり、なりふり構わず感情むき出しで頑張る姿に応援の声があがっていました。