解散しても抜け道がある
鈴木:小川さんの会見で潮目が変わったことは確かです。岸田文雄・首相は統一教会の解散命令請求が認められる要件について「民法の不法行為も入り得る」と踏み込んだ発言をしました。勅使河原氏が、元妻が信者の橋田達夫さん宅をアポなし訪問して“口止め”を迫った(注:元妻が旧統一教会の信者で、2年前に長男が自死したとメディアを通じて訴えている橋田達夫さんのもとに、10月16日、勅使河原氏が事前の許可なく自宅訪問。その場で勅使河原氏から「メディアに出ないでほしい」と要請されたと橋田さんが明らかにした)のも、焦っているからでしょう。教団と数々の接点があった山際大志郎・経済再生相も辞任し、衆議院の予算委員会では岸田首相が「元信者から直接話を聞く」と明言しました。当然、小川さんが筆頭になります。
小川:私たちが具体的に求めているのは統一教会の宗教法人解散と、被害に遭った人を救済するための法律立案です。
7月から活動を続けてようやく岸田さんと面会できそうなことは、純粋に感慨深い。ただ、形だけにならないように、被害者を救う具体的な方策を提案したい。この機会を無駄にするわけにはいかないと思います。
鈴木:2世問題の救済とともに、統一教会を利用してきた政治家の検証も進めてほしい。山際氏の辞任も遅いくらいです。
解散についても、国が解散請求を出せば裁判所が認める可能性は高いが、解散しても直接韓国に送金したり金を持参するなどの抜け道があり、解散がゴールではありません。
小川:統一教会の悪質とされる行為自体を取り締まらないと、今後も同様の宗教が出てきてしまいます。私が一番願うのは日本における反セクト法を作り、政治との癒着や多額の献金を規制することです。その上でカルト的な宗教や人権侵害を禁じることを子供たちに教育してほしい。
鈴木:小川さんに負担を押しつけるのは心苦しいですが、ようやく大きな山が動き始めたのは事実です。このタイミングで小川さんの真摯な気持ちが伝われば岸田さんの心も動くと思うので、どうか頑張ってください。
小川:活動の上で精神的な負担はあるけれど、教会の元幹部や脱会した2世からの激励の連絡が励みになります。ここからが本番だと思って、被害者の声を伝え続けたいです。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2022年11月11日号