7月8日、突然の凶弾に倒れた安倍晋三・元首相(享年67)。事件によって旧統一教会との関係が取り沙汰されたこともあり、「国葬」開催は世論を二分する事態となった。死後もその政治家としての功罪が問われ続けるなか、安倍氏の「知られざる素顔」を知ることができる貴重な資料映像が見つかった。【全3回の第1回】
この映像は、安倍氏が死去するわずか1か月ほど前の6月7日に議員会館で収録されたもの。インタビュアーは、漫画『気まぐれコンセプト』や、映画『私をスキーに連れてって』などで知られるホイチョイ・プロダクションズ代表の馬場康夫氏である。2人は同じ幼稚園に通い、成蹊でも小学校から大学までを一緒に過ごした同級生であり、「親友」だった。
馬場氏の書籍『この1本!~超人気映画シリーズ、ひとつだけ見るならコレ~』が8月22日に発売されることを記念し、そのプロモーションの一環として馬場氏が映画好きの安倍氏に“映画対談”をオファーしたのだ。
安倍氏はスーツにネクタイ、議員バッジという政治家然とした装いながら、表情は柔和そのもの。馬場氏が「タメ口だったらごめんなさいね」と断ると、安倍氏は「そりゃ別に構わないよ。そのほうがいいでしょ」と応じ、映画への想いをタメ口でフランクに語り始めた。対談は1時間近くに及んだが、全編から安倍氏の「映画愛」と馬場氏への「友情」があふれ出ている。
激務で東京を離れられない官房長官時代は、休日はほとんど映画館で過ごしたと語った安倍氏。映画にのめり込んだのは、小学生時代に自宅のある富ヶ谷からほど近い渋谷パンテオンなどの映画館に通い詰めたことがきっかけだったという。『101匹わんちゃん』や『メリー・ポピンズ』『うっかり博士の大発明 フラバァ』などのディズニー映画が大好きだったというが、特に思い出深かったこととして語ったのが、母・洋子さんと一緒に見たオードリー・ヘップバーン主演映画のエピソードだ。
安倍氏「けっこう、小学校の時は母親に連れられて、見に行ったのもあるな。やっぱりパンテオンに。『マイ・フェア・レディ』を。母親に連れられてね。(映画館の席が)いっぱいだったから、その、階段に座ったんだな、母親と2人で」
馬場氏「ふふ、そりゃ知らなかった」
安倍氏「当時は階段に座って見ても良かったんだよ」
馬場氏「当時は立ち見というか、はみ出て横で見てましたよね」
安倍氏「そうでしょ。今は消防法上、なかなか許されないんだと思うけど。当時はみんな立ち見とかいっぱいあったね」
母・洋子氏と映画を見た子供時代を懐かしく語る安倍氏の表情は、政治家として記者会見やインタビューに応じる時のものとはまるで別物に感じられた。
この動画で安倍氏は、加山雄三主演「若大将シリーズ」や、『ALWAYS 三丁目の夕日』『ミリオン・ダラー・ベイビー』などの名作にも触れている。
※動画の公開にあたっては、馬場氏から昭恵夫人に了解を得ています。
【第2回に続く】