7月8日、突然の凶弾に倒れた安倍晋三・元首相(享年67)。その安倍氏の「知られざる素顔」を知ることができる貴重な資料映像が見つかった。今年6月に議員会館で収録されたもので、幼稚園時代から大学までの同級生であり「親友」のホイチョイ・プロダクションズ代表の馬場康夫氏との対談動画だ。馬場氏の書籍『この1本!~超人気映画シリーズ、ひとつだけ見るならコレ~』の発売を記念し、そのプロモーションの一環として馬場氏が映画好きの安倍氏に“映画対談”をオファーしていたのである。その動画は安倍氏の「映画愛」と馬場氏への「友情」があふれ出るものだった。【全3回の第3回。第1回から読む】
対談の後半は、安倍氏のトークも絶好調。官房副長官時代に、小泉純一郎首相(当時)と映画館で偶然一緒になったというエピソードでは、その洒脱な語り口に取材陣は大爆笑となった。
また、安倍氏は映画だけでなく、AMAZONプライムやNetflixなどで海外ドラマもよく見ていると告白。昭恵夫人と見た『愛の不時着』のエピソードでは妻思いの故人の人柄が偲ばれるが、安倍氏が特に好きだったのはアメリカ政界の裏側を描いた『ハウス・オブ・カード 野望の階段』だという。
安倍氏「(主演の)ケビン・スペイシーは、いろいろとスキャンダルがあって(ドラマから)降りちゃうんだけど、彼がいないとやっぱりダメだったね、最後のシーズンは。(ケビン・スペイシーの役柄は)ものすごい悪いんだよね」
馬場氏「僕らは、『ハウス・オブ・カード』を見て、ケビン・スペイシーがのし上がっていくみたいなのを、『はぁ~』ってヨソの人の話だと思って見てますけど、これ、政治家は身につまされて見てるの?」
安倍氏「さっきオバマ大統領に呼ばれた晩餐会の話をしたんですが、晩餐会の私の最初の挨拶の中でね、『ハウス・オブ・カード』のことを言ったんですよ」
馬場氏「おぉ、ホワイトハウスでその話をしたのね(笑)」
安倍氏「『え~、いまやアメリカのエンターテインメントは日本でも愛されています』という話をして。で、私も『ハウス・オブ・カード』を見たんですよって話をしたんですよ」
馬場氏「うん、うん」
安倍氏「で、『ハウス・オブ・カード』は、副大統領がいろいろ策を弄して、(大統領を)追い落とすじゃないですか。で、『私はこれをすごく大好きなんだけど、絶対に副総理には薦めないんですよ』って話をして、笑いを取ったんです(一同爆笑)」
馬場氏「ハハハ! おもしれー!」
安倍氏「で、ほぼ全員が笑ったから『みんな見てるんだな』と思って。で、(日本に)帰ったら麻生副総理が『なんか私のことも話題にして下さったようですね』って(一同再び爆笑)」
これ以外にも、『ハウス・オブ・カード』を軸に日米政界の意外な話が多数繰り広げられる。安倍氏の意外なほどのウィットさを感じられる対談と言えるだろう。
※動画の公開にあたっては、馬場氏から昭恵夫人に了解を得ています。
【了。第1回から読む】