10月31日午後20時過ぎ、渋谷センター街はハロウィンで訪れたコスプレ姿の人々で溢れ返っていた。喧噪のなか、一際目立つ姿で往来の人々に手を振っていたのは、今年7月、銃撃事件で命を落とした安倍晋三・元首相のコスプレをした男性だった。
安倍氏のコスプレをした男に複数の外国人観光客グループがハイタッチを要求し、「アベサン、サイコウ!」「アベサン、イキタネ!」と歓声を上げていた。そのグループの女性に話を聞くと、「ハロウィンの1週間くらい前に、フィリピンから来ました」と日本語で話した。
「日本のマンガのファンで、キャラのコスプレを楽しみに来ました。そしたら、そこにアベサンがいたから、嬉しくなりました。アベサンは私たちもそうだし、世界を繋げたすごい人だと思いますよ」
安倍氏のコスプレをした男性本人に話を聞くと、「アベノマスク」で知られる布製のマスク越しに、小さな声でこう話した。
「安倍さんの仮装をして来たのは、今日が初めてです。たくさんの人が写真を撮ってくれる。安倍さんは世界中から好かれた、偉大な人でした。こうやって皆さんと感情を共有できて嬉しいです」
安倍氏のコスプレをした男性から少し離れた場所には、日の丸に「日本」の文字が入ったハチマキをした20代の男性が歩いていた。「愛国心です!」と宣言する男性に、この先に安倍氏のコスプレをした男性がいることを告げると、「ウオオーッ! マジッスか!?」と声を上げ、「安倍さん、ありがとうございました!」と土下座を繰り返した。
「安倍さんは最高の総理大臣でしょ、僕らは総理大臣と言えば安倍さんですよ。日本を愛してくれてありがとう、日本万歳!」(20代男性)
安倍氏の国葬が行なわれた9月27日、渋谷周辺はいつもと変わらぬ様子で黙祷も抗議も行なわれず、渋谷に集まる若者の国葬への「無関心」が話題になったが、ハロウィンのこの日、「安倍氏のコスプレ男性」には多くの注目が集まることとなった。