今年6月の改正放送法の成立を受け、NHKは値下げやチャンネルの停波といったスリム化案を公表した。その一方で、「罰金」制度による受信料の徴収強化も注目されている。果たして、本当の改革と言えるのか──。【全3回の第3回。第1回から読む】
根本的な改革を求める声もある。
「NHKの受信料は月に200~300円でいいでしょう」
そう語るのは、元内閣官房参与で嘉悦大学教授の高橋洋一氏。
「ニュースや災害報道、国会中継や良質のドキュメンタリー番組などには公共性があります。でも、お笑い番組などはどうでしょうか。そういう番組は『スクランブル放送』にして見たい人だけに課金し、それを番組制作費に充てればいい。また、電波は公共のものですが、総務省が差配するなりしてNHKの電波のEテレの周波数帯などを貸し出し、それをNHKの制作費に充てることなどを考えればいい。そうすれば、受信料は200~300円まで下げられるのではないでしょうか」
元経産官僚で政策工房代表の原英史氏は、公共と民間のそれぞれを担う“2つのNHK”に分割することを提案する。
「災害報道など公共放送として残すべき領域は『公共NHK』として、見たい人だけが見る『民間NHK』と分割する。公共部分は受信料をタダにして国費を投じてもいいと思うし、民間部分は民放と同じ仕組みにすればいい。広告収入を得るか、動画配信サービスなどのように定額課金制にするか。いずれにせよ、現在の受信料制度に頼らないようにして、分社化するのが妥当でしょう」
そこまでして初めて「改革」と呼ぶに値するという意見だ。
巨額の剰余金があるなか今回の値下げは十分と言えるのか、割増金制度が「徴収強化」であるとの批判をどう捉えているのか、NHKに問うとこう回答した。
「スリムで強靭な『新しいNHK』を目指す構造改革で徹底した支出削減を行なった結果、還元の原資を確保しました。物価高が続くなか、少しでも負担軽減につながればとの思いから1割の値下げを着実に実行してまいります。
割増金制度については、導入されてもNHKの価値や受信料制度の意義をご理解いただき、納得してお手続きやお支払いをいただくという、これまでの方針に変わりはありません」(NHK広報局)
テレビ離れが進むなか、公共放送の価値や意義がこれまで以上に問われている。改革が道半ばであることは、疑いようがないだろう。
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2022年11月11日号