万年抱えていた目の悩みの原因が白内障であったのならば、それはたった5~30分間の手術で解決できるかもしれない。白内障手術の名医・平松類医師の手術現場に密着した。
白内障は50代で約半数、60代、70代で8割、80代ではほとんどの人が発症する。年齢を重ねれば誰もが避けて通れない病気だが、知られていないことも多い。
「加齢に伴って発症するので老眼と勘違いしている人も少なくありません。しかし、白内障と老眼とは大きく異なるものです」(二本松眼科病院・平松類医師)
老眼は水晶体が硬くなり、弾力性が低下することでピント調節の機能が効かなくなる疾患。一方、白内障はタンパク質と水で構成される水晶体が濁って見えにくくなる疾患である。生卵の無色透明な白身を茹でると白くなるのと同じ現象だ。いずれも加齢で生じることが多いという点では共通している。しかし、白内障は老眼とは異なり、色合いの差が分かりにくくなる。
「淡い色の判別が難しくなるのが白内障の初期症状です。例えば、ガスコンロの火が分かりにくくなる。そのために、袖口に火がついてしまうこともあります」(同前)
子どもの送り迎えなどで頻繁に車を運転するという患者のAさん(50代女性)は、夜間に対向車のライトが乱反射しているように見えたことが、白内障発覚のきっかけになったという。
「まさか、という思いでした。年齢的にもまだ白内障にはならないと思っていましたから……」(Aさん)
白内障は、濁った水晶体を人工の眼内レンズに入れ替える手術が唯一の治療方法。しかし、眼にメスを入れるために二の足を踏む患者も少なくないだろう。Aさんに術中の実感を聞く。
「手術中は目が押さえられているような感覚でした。視界は水中にいるときのようにぼやけていて、遠くの方に光が見える感じでした」
緑内障と違い、濁ったレンズさえ取り替えれば劇的に視界が改善する白内障。いつもと違う見え方が気になりだしたら、まずは診察を受けてみることが肝心だ。