ライフ

遺伝子治療で「ドパミン」を産生 パーキンソン病克服への第一歩

ドパミンが不足するとパーキンソン病を発症する(イラスト/いかわやすとし)

ドパミンが不足するとパーキンソン病を発症する(イラスト/いかわやすとし)

 脳内でドパミンが不足するとパーキンソン病を発症し、体の震えや筋肉がこわばり動けなくなる。治療は“L-dopa”などの薬物療法が中心だ。L-dopaは脳内でAADCという酵素によりドパミンに変換されるが、病気の進行で効きにくくなる。それでもAADCの遺伝子を組み込んだベクターを注入する遺伝子治療で長期間ドパミンの産生が継続する。現在、医師主導治験が進行中だ。

 パーキンソン病では運動機能の障害が起こり、寝たきりになることも多い。他に便秘や頻尿、発汗、疲れやすさ、立ち眩み、うつ症状、意欲低下なども生じる。50歳頃から発症し、高齢になるほど増加してゆく。患者は国内に約15万人と推計されている。

 治療は薬物治療が中心で、主な薬剤はドパミンの前駆物質(ドパミンになる前の物質)のL-dopaだ。服用すると神経細胞に取り込まれて変換し、ドパミンを産生する。

 自治医科大学附属病院神経内科の村松慎一教授に聞いた。

「L-dopaが効くのは服用当初だけです。というのも長く服用していると次第に症状の抑制時間が短くなり、効果が減少するからです。これはL-dopaがドパミンに変換されるときに必要なAADC(芳香族アミノ酸脱炭素酵素)の産生が減ることが原因です。そこで20年ほど前からAADCの産生を促す遺伝子治療の研究を行なっています。これまで2度の臨床研究を実施し、今秋から医師主導治験を始めました」

 ドパミンの産生に必要な物質は3つ。TH(チロシン水酸化酵素)とGCH(グアノシン三リン酸シクロヒドレース)はアミノ酸からL-dopaを作る。前述したようにL-dopaはAADCによってドパミンに変換される。

 遺伝子治療は病原性のないアデノ随伴ウイルス(AAV)にAADCを産生する遺伝子を組み込んだベクター(運び屋)を作り、それを定位脳手術により脳内の神経細胞に注入する。頭頂部と額の中間付近の左右2か所に10円玉くらいの穴を開け、そこから薬剤を注入する針を刺す。

 10数センチの長さの針は細い管でポンプとつながり、電動モーターでゆっくり薬剤を注入する。1つの穴に2か所、1か所あたり50マイクロリットルの薬剤を注入。4か所合計で200マイクロリットル(1ミリリットルの5分の1程度)だ。そして、10マイクロリットルごとに針先を約1ミリメートル引き、必要な箇所に満遍なくいきわたるようにする。

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン