コロナ禍で市販薬とともに消費が増えたのが、ドラッグストアなどでより手軽に購入・摂取できる「サプリメント」だ。だが、ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師は「サプリは全般的に毒にも薬にもならないことが多いが、過剰に摂取され、健康を害するケースもある」と指摘する。
分かりやすい例が、アルコール類の飲みすぎ対策として用いられるウコンだ。
「ウコンは摂りすぎると胃潰瘍になったり、むしろ肝臓を悪くしたりする例が報告されています。たまにならいいですが、使いすぎは避けたほうがいいでしょう」(谷本医師)
また、健康な人が必要以上に栄養を“摂りすぎてしまう”ことで生じる危険もある。
「ビタミンDやカルシウムは、たしかに骨粗鬆症や骨折歴がある人が摂ると効果が期待できる成分ではありますが、健康な人での効果は乏しく、摂りすぎで脳卒中のリスクが上がるとの報告もあります。そもそも骨粗鬆症や骨折の患者さんは整形外科で処方される薬があるので、サプリメントをわざわざ購入する必要は感じません」(同前)
秋津医院院長の秋津壽男医師は「私はサプリ反対派です」と言う。
「正しいバランスの食事を摂っていれば必要ありません。もちろん規則正しい生活が送れないなど、必要なケースもあります。しかし、サプリメントのなかには飲みすぎると危険が生じるものもある。例えばダイエットや筋肉増強時に用いられることのあるプロテイン(たんぱく質)は、代謝する腎臓に大きな負担をかけます。米国ではプロテイン腎障害が話題になっています。薬と同様に、摂りすぎると腎臓が処理しきれなくなるのです」
飲みすぎで毛が抜ける?
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、「高齢だからといって、ベジタリアンや過剰なダイエットでもしていない限り、栄養素が足りなくなることはなかなか起こりにくい」と指摘する。
「食事で栄養素がしっかり摂れている場合、さらにサプリメントで過剰に摂取することでトラブルが起こる可能性があります。ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKといった脂溶性ビタミンは、肝臓や脂肪細胞に蓄積され、体内で過剰になると頭痛や吐き気などを引き起こしてしまいます。
さらに、それらの過剰摂取により、ビタミンAは脱毛や皮膚の剥離、ビタミンDは高カルシウム血症や軟組織の石灰化、ビタミンEは下痢などの原因となることがあります」(上医師)