テレビ業界で今、2つの番組の復活が注目を集めている。それは『クレイジージャーニー』(TBS系)と『アナザースカイ』(日本テレビ系)の2つの旅番組。復活の背景についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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今秋、『クレイジージャーニー』と『アナザースカイ』の2番組が復活しました。
『クレイジージャーニー』は、独自の視点やこだわりを持って世界&日本をめぐる“クレイジージャーニー”が特異な体験談を語る伝聞型紀行バラエティ。一方の『アナザースカイ』は、多種多様なヒストリーを持つゲストが、世界や日本国内のゆかりのある地を訪れる様子に密着し、自身のルーツや人生観・仕事観について本音を語るドキュメンタリー。
どちらも広義では旅番組であり、「人気を博していたにもかかわらず終了していた」という点も似ています。今秋にそろって復活したのは、どんな背景があったのか。コロナ禍の影響か、それとも業界や各局の事情はあるのか。いくつかの角度から掘り下げていくと、その理由が浮かび上がってきます。
旅行需要増とコンテンツの再評価
まずふれておかなければいけないのは、『アナザースカイ』が終了した原因の1つが「コロナ禍で海外ロケが難しくなった」こと。国内ロケや総集編などを放送したものの、やはり難しさがあり、1年前に終了しました。
そして現在は全国旅行支援のスタートや出入国時の制限緩和などで、ひさびさに旅行需要が増えはじめています。もちろんこの動きはテレビ業界でも以前から予測されていて、「国内外の旅行コンテンツを増やそう」という狙いがあったのは間違いないでしょう。
ただそれでもコロナの脅威が完全に消えたわけではなく、特に海外旅行に関しては円安の影響なども含めて、「まだ見送りたい」という人も多く、観光地でない地域はなおのことでしょう。そのため、自分たちが行けないであろう地域を旅する番組のニーズが取りざたされています。今秋に復活した『クレイジージャーニー』と『アナザースカイ』はその最たるところであり、「旅へのモチベーションは上がっているけど、実際はまだまだ行けない」という人々の受け皿となっていくでしょう。
もう1つ、テレビ業界の傾向としてあげておきたいのは、「コンテンツ再評価・再活用の動きがある」こと。無料・有料それぞれのネットコンテンツが乱立し、テレビ番組を参考にしたような企画も多い中、「それらとの争いに勝って見てもらわなければいけない」という厳しい競争にさらされています。
「ネットコンテンツと差別化できるのは何なのか」を考えたときに、業界内で進んでいるのが既存コンテンツの再評価・再活用。局内のオリジナリティや希少性の高い番組はどれなのか。美しさなどの撮影技術を生かしている番組はどれなのか。SNSの動きがよさそうな濃いファンがいて復活が期待されている番組はどれなのか。『クレイジージャーニー』や『アナザースカイ』は、それらに該当する番組なのでしょう。