健康を保つにはまず食事から。知ってのとおり、腎臓病、心臓病、高血圧などの重症化予防に減塩は重要だ。しかし、塩分の減らしすぎは病気を招く。内科医で日本中医薬学会理事の関隆志さんが言う。
「認知症の高齢者は、特に食塩不足になりやすい。また、食の細い高齢者が減塩すると、エネルギーやたんぱく質など、ほかの必須栄養素の摂取量まで減少し、運動機能が低下するフレイルに陥る可能性があります。また“みそ汁は塩分が多く血圧を上げる”というのは誤解。
みそのペプチドには血圧上昇ホルモンをブロックする働きがあるほか、野菜類を具として入れることで、カリウムによって塩分の排出が促されるため、血圧を気にしてみそ汁を避ける必要はありません。みそ汁の摂取量が多い人ほど胃がんでの死亡率が低いというデータもあります」
一方、酢は減塩には役立つが、摂りすぎは胃腸を刺激するので、多くても1日大さじ1杯程度に。「百薬の長」とも「万病のもと」ともいわれる酒は、病気ごとにリスクが異なる。ビールは体を冷やす一方で、日本酒や焼酎は中医学的には体を温める働きがある。
「漢方薬の当帰芍薬散、八味地黄丸、桂枝茯苓丸は酒で飲むことが推奨されているほどです」
血行が促進されるほか、リラクセーション効果や食欲増進効果、胃酸分泌の促進など、よい影響が少なくないと、RDクリニック医師で東海大学兼任講師の北條元治さんは言う。
「アルコールは、少量でもがんや感染症などの死亡リスクを増加させるという指摘がある一方、少量のアルコールが虚血性心疾患による死亡リスクを減らすという報告もされています。
厚労省の指標では、ビールなら中びん1本、酎ハイなら350ml缶1本、ウイスキーならダブル1杯、日本酒なら1合までを『適度な飲酒』としています。この範囲内、かつほろ酔い程度までを守れば、酒は必ずしも悪いものではありません」(北條さん)