ライフ

クレームを過度に恐れ無意味な規制や自粛をするよりは「貴重なご意見」に感謝するほうがいい

ビジネスマン

気を回しすぎてもよくない(イメージカット)

 炎上は誰しも避けたいだろうが、かといってクレームに過敏になりすぎるのも考えものだ。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 すでに削除されているようなのでお名前は書きませんが、数日前、ある高名な作家の「怒りのツイート」が話題になりました。原稿の中の「お転婆」という言葉について、編集者が「高齢者からクレームがくるかもしれないので平仮名にしてもいいか」と打診。作家氏は激怒し、原稿を差し止めたとか。

 その後のツイート(これも削除)には、編集者から「筆者の気持ちを傷つけ云々」と謝罪があったことが書かれていました。作家氏は、そういう問題ではなく読者からクレームがくるかもしれないと恐れる姿勢に、怒りや呆れを覚えていると言っています。

 メディア界が、いわゆる「差別語」や「不快語」に神経をとがらせるのは、今に始まったことではありません。もちろん、傷つく人がいる言葉や表現を避けるのは当然です。クレームを受けて、「たしかにこの表現はよくなかった」と気づくことも多いでしょう。

 しかし、「クレームがくるかもしれないので」と気を回して、「これはダメ、あれもダメ」と言い始めたらキリがありません。たとえば「今日はスマホでYouTubeをダラダラ見てお酒を飲んで寝た」という毒にも薬にもならない一文でも、

「スマホがない人や視覚に障害がある人への配慮が足りない!」

「私はお酒が飲めない体質です。飲酒行為を自慢気に書くなんて神経を疑います!」

むしろ高齢女性に失礼なのでは

 そんなクレーム(いちゃもん?)の可能性を想定することができます。メディアに限らず、一般企業やお役所でも、これに近い理由で「自粛」を決めてしまうケースは珍しくありません。

 今回の「お転婆」にしても、高齢女性からの「活発な女性のことを『転んだ婆あ』と言うとはケシカラン! ひじょうに不愉快だ!」といったクレームを想定しているわけです。それは、むしろ高齢女性に失礼なのではないでしょうか。

「婆」という字には多様な意味があるし、そもそも「お転婆」はお婆さんが転んだ状態を指しているわけではありません。「ケシカラン!」と怒るのは、明らかに的外れでかなり頭が悪い行為です。「いや、高齢女性ならそういうクレームを入れてくるかもしれない」という心配は、高齢女性全般をかなりバカにしていると言えるでしょう。

 ただ、大半の賢明で良識がある高齢女性が「お転婆」という表現を気にしないとしても、例外的な人がいないとは限りません。当事者ではなく、横から「高齢女性に謝れ!」と言ってくる人が現われるかもしれません。胸が大きい女性モデルや萌え系のイラストを使ったポスターなどが、「フェミニスト」を名乗る過激な一派に理不尽な攻撃を受けたケースを思い起こすと、行き過ぎた心配とは言い切れないのが悲しいところです。

関連記事

トピックス

沖縄を訪問された愛子さま(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
天皇ご一家が“因縁の地”沖縄をご訪問、現地は盛大な歓迎ムード “平和への思い”を継承する存在としての愛子さまへの大きな期待 
女性セブン
TBS田村真子アナウンサー
【インタビュー】TBS田村真子アナウンサーが明かす『ラヴィット!』放送1000回で流した涙の理由 「最近、肩の荷が下りた」「お姉さんでいなきゃと意識しています」
NEWSポストセブン
「ONK座談会」2002年開催時(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》「王・長嶋・金田座談会」を再録 2000年の夢のON対決にミスターが漏らした「ボクはもう御免。ノーサンキューだね。2度とやりたくありません」の真意
週刊ポスト
「寂しい見た目」の給食に批判が殺到(X /時事通信フォト)
《中国でもヤバい給食に批判殺到》ラー油かけご飯、唐揚げ1つ、「ご飯にたまご焼きだけ」と炎上した天津丼…日本・中国で相次ぐ貧相給食の背景にある“事情の違い”
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問している佳子さま(写真/アフロ)
佳子さま、外交関係樹立130周年のブラジルを公式訪問 子供たちと笑顔でハイタッチ、花柄のドレス姿も 
女性セブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
家出した中学生を自宅に住まわせ売春させたとして逮捕された三ノ輪勝容疑者(左はInstagramより)
《顔面タトゥーの男が中学生売春》「地元の警察でも有名だと…」自称暴力団・三ノ輪勝容疑者(33)の“意外な素顔”と近隣住民が耳にしていた「若い女性の声」
NEWSポストセブン
田中真一さんと真美子さん(左/リコーブラックラムズ東京の公式サイトより、右/レッドウェーブ公式サイトより)
《真美子さんとの約束》大谷翔平の義兄がラグビーチームを退団していた! 過去に大怪我も現役続行にこだわる「妹との共通点」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《「来来亭」の“ウジムシ混入ラーメン”動画が物議》本部が「他の客のラーメンへの混入」に公式回答「(動画の)お客様以外からのお問い合わせはございません」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン