歳を重ねるほど身体の様々な部位には衰えが出るもの。それは「勃起力」も同様だ。日本臨床内科医学会によると、ED(勃起不全)に悩む日本人男性は推計1130万人とされ、40歳以上の3分の1が該当するという。しかし、家族や友人にも相談しにくいことから、症状の改善に悩む人が多い。
EDの原因は生活習慣病などによる血管障害などのほか、ストレスによる心因性も少なくない。しかし、実はその4分の1が「薬剤性ED」だとの研究結果もある。銀座薬局代表の薬剤師・長澤育弘氏が言う。
「服薬によってEDの症状が出ることはよく知られており、一般的に、作用が強い薬ほど副作用が出やすい傾向があります。医師や薬剤師が薬の処方を行なう際に参照する添付文書にも、副作用としてEDが記されている薬は数多くあります」
添付文書にEDに関連する副作用(勃起不全、勃起障害、勃起機能不全)の記載がある薬について、別掲の表にまとめた。
実は、長澤氏自身も薬の服用による勃起不全を体験したことがある。
「前立腺肥大症治療薬を服用していた時に、たしかに勃起不全を体感しました。現在は男性型脱毛症(AGA)の治療薬としても使われる薬で、添付文書の副作用欄には〈性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害)〉とあります。もともと男性ホルモンの働きを抑える薬なので、それが原因で性欲減退につながるのではないか、と言われています」(以下、「 」内のコメントは長澤氏)
副作用として勃起不全を起こす薬の代表的なものが、高血圧治療薬(降圧剤)だ。
急激な血圧上昇は前述のように心筋梗塞などにつながるため、血圧を低くコントロールするために薬を服用する人は多い。難しい問題だが、腹上死を避けるうえで重要な役割が期待される降圧剤のなかには、性機能そのものを衰えさせる副作用を持つ薬がある。
「降圧剤のなかでも、特に薬剤性EDが出やすいとされる種類がカルシウム拮抗薬、β遮断薬、利尿薬です。カルシウム拮抗薬は降圧剤のなかでも特に効き目が強く、重篤な副作用の報告も少ないため医師の第一選択薬になりやすいのですが、降圧効果が強い分、陰茎に血流を送り込む力も弱くなるので、人によって勃起しにくくなる可能性があるのです」