映画『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)はワークショップ発の自主映画でありながら、二〇一八年六月に公開されると大きな話題を呼び、やがて全国規模に公開は拡大されて大ヒットを遂げる。そのヒットの口火を切ったのが新宿のK’sシネマと池袋シネマ・ロサだった。今回はシネマ・ロサ支配人の矢川亮氏に、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がその興行の裏側を聞いた。
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矢川:もともと池袋シネマ・ロサでは自主映画の上映もやっていました。今、四十代半ばの人たち──例えば、入江悠監督や沖田修一監督の作品もうちで上映していました。その世代の監督作品は比較的かけていたのですが、そこからしばらくやらなくなったんです。といいますのも、それまでは都内で自主映画を上映する劇場というのがうちしかなかったのが、他にも出てきた。そうなると、渋谷や新宿がエリア的に中心になり、依頼を受ける頻度が減っていったんです。それがつい五、六年前ぐらいです。
──池袋シネマ・ロサというと自主映画の聖地のイメージがありましたが、途絶えていた時期もあったんですね。
矢川:はい。その時はロードショー映画が中心でした。ところが、今度は池袋東口の興行環境が激変するのが分かってきたんです。東宝さんと佐々木興業さん(※シネマサンシャイン)が、大きなシネコンを作る、と。そうなると全国ロードショー映画はやっぱり大手のシネコンさん中心になってしまう。それなら、最近はちょっと途絶えているけれども、以前のように自主制作のものに力を入れていこうか、という流れで再開しました。
──ちょうどそのタイミングだったんですね。
矢川:インディーズフィルム・ショウと名付けて「レーベル」っぽく始めました。その初期にいきなり『カメ止め』がぼーんと出てきちゃったという感じです。