臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、中条きよし参院議員(76才)が国会質疑で新曲宣伝の発言をした件について。
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「おかしいものにはおかしいとはっきり言う」
日本維新の会、中条きよし参院議員のオフィシャルサイトのトップページ、中条きよし-人生のテーマ-の1つにそう載せている本人が、国会でおかしいことをやらかしてしまった。
15日の参議院文教科学委員会で、質問の最後に突然、自身の新曲と年末に開催するディナーショーの宣伝をしたのだ。いつか国会で、こんな珍事が起きるのではないかと思っていた。それが4月の出馬会見で「年寄りの良さと力と経験と常識みたいなものを、もう1回見せられないかなと」と話していた中条議員がやってしまうとは驚きだった。
質問冒頭、中条議員は立ち上がると「うちの秘書も、何を言うのか心配そうな顔をして見ておりますので」と述べた。これは「セルフ・ハンディキャッピング」と呼ばれる言動だ。”よくわからないが””時間がなくて”など、あらかじめ何らかの言い訳や予防線を張り、自分の心を守ろうと先回りする心の防衛機制である。自信がない、評価されないかもしれないなどと思う時に出やすく、前もって言い訳をすることで、たとえ失敗しても自尊心を保てるようにするためといわれる。中条議員も自分の不安を秘書の心配そうな顔にすり替え、予防線を張ったのだろう。
だが質問が終わると、締めくくりに「最後になりますけれども」と新曲について話し始めたのだ。曲の名前、発売の日、ディナーショーの日程を言う時はゆっくりはっきり、言葉の区切りもしっかりと力を込めている。強調したいところは頷きながらと伝え方もわかりやすく、ボディランゲージをうまく使っているところは、さすが芸能人である。自身の芸能生活最後のディナーショーをアピールすべく静まりかえった委員会の中に、中条議員の声が響いた。
「不適切」「不穏当」と批判されたこの発言について、中条議員は16日、謝罪をした。「こういっちゃいけない、ああいっちゃいけないというのがまだわからない」ということのようだが、「宣伝だと全く知りませんで」というのは無理がある。