このようにネット上で誹謗中傷を繰り返す人の心理を「依存症ともいえる状態になっていると考えられます」と分析するのは、『言語化の魔力』の著書もある精神科医の樺沢紫苑さん。樺沢さんのSNSには80万人以上のフォロワーがおり、ユーザーの心理にも詳しい。
「悪口を書き込んで、『スッキリした』と“快感”を感じる人は、さらに“快感”を求めて、悪口を繰り返します。このような“快感”を感じる時には、ドーパミンという脳内物質が分泌しているのです。
脳はさらにドーパミンを求めて、事実無根なことまで書き込むようになったり、行動がエスカレートし、歯止めが効かなくなっていきます。これは、アルコール依存症、薬物依存症と同じような、依存症といえるかもしれません」(樺沢さん)
顔が見えず人物像が特定されないネット上ではさらにそれがエスカレートし、感情のコントロールができなくなっていく・・・。
交通事故やこういった誹謗中傷という現代社会の問題に声を上げていきたい、と松永さん。初公判後、報道陣を前にこう語った。
「自分のことを『金や反響や目当て』と書かれたのはもちろん傷つきましたが、そこから先の部分、真菜と莉子のことを言われたのが本当につらかったです。
亡くなった人には確かに人権はなくなってしまう。奪われた命ですが、真菜と莉子には人権はない。だから侮辱罪にも当たらない。だけどほんとうにそれでいいのか? という問題提起にもつながると私自身は思っています。彼の投稿トータルで私は心から傷ついたので。できればそこまで報道していただきたい」
松永さんは、元々は人と争うのは嫌いだし、自分が前に出ていくタイプではなかった。気丈に話しているけれど、問いかけては悩み苦しんでいた、と明かすのは、松永さんが副代表理事を務める『一般社団法人関東交通犯罪遺族の会(あいの会)』の代表理事・小沢樹里さん。
「社会に伝えようとすると、どうしても強いところしか見えないけれど、松永も寝られない日が続き、警察に行って話をした日も『すごく疲れた』と電話連絡がありました。交通事故でつらい思いをしたうえに、刑事事件が終わっても続く二次被害をなんとかなくしていきたいです」(小沢さん)
自分が経験して苦しんでいることを伝え、社会へ還元していきたい。それが妻と愛娘の命を無駄にしないことにつながるから、と松永さんの信念は揺るがない。これから続くこの民事裁判では、今後、被害者として法廷に立ち、意見陳述を行う。