ライフ

青森県議会のお茶出し問題だけじゃない SDGsを標榜しながら女性蔑視がまかり通る仕事現場

問題は至る所で起きている。青森県庁庁舎(時事通信フォト)

問題は至る所で起きている。青森県庁庁舎(時事通信フォト)

 SDGs(持続可能な開発目標)を政府や企業が掲げているが、かけ声だけで見せかけのものだというイメージが拭えない。CO2削減に努力して環境に配慮しているとアピールすれば、それですむという姿勢の人たちが少なくないからだが、格差や差別なども解消するべき目標に掲げられている。ところが差別、特に男女差別については存在すら認識できないどころか、開き直る人たちがまだまだいる。ライターの森鷹久氏が、SDGsの推進を掲げながら、ミソジニー(女性蔑視、女性嫌悪)を隠そうともしない、女性が働く現場についてレポートする。

 * * *
 青森県議会で永く続いてきた女性職員によるお茶くみ、お茶出しの習慣が、あまりにも時代錯誤だということで、青森県内の市民団体が知事や議長に廃止を要請したと話題になった。

「県議会の委員会では、女性の非常勤職員が、議員や県幹部の席を回ってお茶を出すという習慣がずっとあったそうです。男女差別ではないかと新聞が報じていますが、本当にその通り。問い合わせを受けた議会は慌てて、お茶くみを”廃止する”と言っていますが、指摘されるまで気がつかないというか、受け入れていたわけでしょう? 頭が古すぎますよ」(大手紙記者)

 ちなみに、青森県のホームページにはしっかり「SDGs(持続可能な開発目標)の推進について」というページが存在し、2019年に策定された「青森県基本計画『選ばれる青森』への挑戦」(計画期間:2019年度~2023年度)にはSDGsの理念が盛り込まれ、取り組みを行う中小企業者向けに特別保証融資制度も存在する。

 青森県議会をめぐるお茶出し問題については、報道を見たほとんどの人たちが「おかしい」と声をあげている。だが一方で、現在、人々が働く職場で、こういった事例はまったくないのだろうか。

見た目は今風だったのでギャップに驚いた

「お茶くみだけなら楽ですよ。うちではランチの手配から、弁当ガラの片付け、デスクの掃除まで全部女性がやります。古い会社? とんでもない。社長は30代と若く、IT系のベンチャー企業ですよ」

 半ば開き直ったように笑いながら話してくれたのは、都内のウェブアプリ開発企業に正社員として勤める北島由衣さん(仮名・20代)。専門学校でプログラミングなどを学び、この会社に就職したのはおよそ5年前。社員10数人のうち、女性は北島さんともう2人だけ。その2人も北島さんより若い。

「最初はアプリ開発などにも関わっていましたが、以前いた庶務のパート女性(60代)が辞めて、その仕事を私がするようになりました。命じられたわけではないですが、男性社員は誰もやらないし、ほったらかしていると食事もできないし、オフィスはゴミだらけです」(北島さん)

 結局、我慢できなくなった北島さんがお茶くみ、弁当発注にオフィスの掃除をし始めると、男性社員達は北島さんをねぎらうどころか、こう吐き捨てた。

「お茶を課長の席に運んだとき”女には女の仕事がある”と言われました。まるで、私がお茶くみをするのは当然、という態度でショックを受けました。この課長だってまだ40代前半。見た目は今風だったので、そのギャップに驚きました」(北島さん)

 あるIT企業が、エンジニアの生活習慣改善のためという名目で、ジャージ姿の「女子マネ」と一緒に毎朝、ラジオ体操をして参加スタンプと引き換えにお弁当を受け取ることができるという社内制度を公開、批判を集めたことがあったが、それから十年近く経った今になっても考え方が更新されていない世界が存在しているようだ。北島さんがこれまでに開発に関わった案件は数えきれず、自身でも「戦力になっている」と思っていたが、このことをきっかけに仕事に対するモチベーションの維持が難しくなっている。

関連記事

トピックス

佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト