SDGs(持続可能な開発目標)を政府や企業が掲げているが、かけ声だけで見せかけのものだというイメージが拭えない。CO2削減に努力して環境に配慮しているとアピールすれば、それですむという姿勢の人たちが少なくないからだが、格差や差別なども解消するべき目標に掲げられている。ところが差別、特に男女差別については存在すら認識できないどころか、開き直る人たちがまだまだいる。ライターの森鷹久氏が、SDGsの推進を掲げながら、ミソジニー(女性蔑視、女性嫌悪)を隠そうともしない、女性が働く現場についてレポートする。
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青森県議会で永く続いてきた女性職員によるお茶くみ、お茶出しの習慣が、あまりにも時代錯誤だということで、青森県内の市民団体が知事や議長に廃止を要請したと話題になった。
「県議会の委員会では、女性の非常勤職員が、議員や県幹部の席を回ってお茶を出すという習慣がずっとあったそうです。男女差別ではないかと新聞が報じていますが、本当にその通り。問い合わせを受けた議会は慌てて、お茶くみを”廃止する”と言っていますが、指摘されるまで気がつかないというか、受け入れていたわけでしょう? 頭が古すぎますよ」(大手紙記者)
ちなみに、青森県のホームページにはしっかり「SDGs(持続可能な開発目標)の推進について」というページが存在し、2019年に策定された「青森県基本計画『選ばれる青森』への挑戦」(計画期間:2019年度~2023年度)にはSDGsの理念が盛り込まれ、取り組みを行う中小企業者向けに特別保証融資制度も存在する。
青森県議会をめぐるお茶出し問題については、報道を見たほとんどの人たちが「おかしい」と声をあげている。だが一方で、現在、人々が働く職場で、こういった事例はまったくないのだろうか。
見た目は今風だったのでギャップに驚いた
「お茶くみだけなら楽ですよ。うちではランチの手配から、弁当ガラの片付け、デスクの掃除まで全部女性がやります。古い会社? とんでもない。社長は30代と若く、IT系のベンチャー企業ですよ」
半ば開き直ったように笑いながら話してくれたのは、都内のウェブアプリ開発企業に正社員として勤める北島由衣さん(仮名・20代)。専門学校でプログラミングなどを学び、この会社に就職したのはおよそ5年前。社員10数人のうち、女性は北島さんともう2人だけ。その2人も北島さんより若い。
「最初はアプリ開発などにも関わっていましたが、以前いた庶務のパート女性(60代)が辞めて、その仕事を私がするようになりました。命じられたわけではないですが、男性社員は誰もやらないし、ほったらかしていると食事もできないし、オフィスはゴミだらけです」(北島さん)
結局、我慢できなくなった北島さんがお茶くみ、弁当発注にオフィスの掃除をし始めると、男性社員達は北島さんをねぎらうどころか、こう吐き捨てた。
「お茶を課長の席に運んだとき”女には女の仕事がある”と言われました。まるで、私がお茶くみをするのは当然、という態度でショックを受けました。この課長だってまだ40代前半。見た目は今風だったので、そのギャップに驚きました」(北島さん)
あるIT企業が、エンジニアの生活習慣改善のためという名目で、ジャージ姿の「女子マネ」と一緒に毎朝、ラジオ体操をして参加スタンプと引き換えにお弁当を受け取ることができるという社内制度を公開、批判を集めたことがあったが、それから十年近く経った今になっても考え方が更新されていない世界が存在しているようだ。北島さんがこれまでに開発に関わった案件は数えきれず、自身でも「戦力になっている」と思っていたが、このことをきっかけに仕事に対するモチベーションの維持が難しくなっている。