「人生先発完投」と書かれたサインボール

「人生先発完投」と書かれたサインボール

 そんなふうに話していた村田氏の座右の銘は「人生先発完投」だ。

 35歳で復活を果たし、40歳で引退するまでに59勝をマーク。引退した1990年のシーズンも10勝8敗の成績を残している。“惜しまれながらの引退”であったことについて聞いたこともある。

「変化球主体で騙し騙しやれば、まだ数年はやれたかもしれなかった。しかし、それでは“村田兆治”ではないんです」

 そう力を込めた村田氏は、引き際についてこんな話をしていた。

「会社から言われる前に、自分から引退をする。プロはそうあるべきだと思って現役を続けていた。余力を残して辞めるというのは、自分の中に信念があるということ。

 プロ野球選手は“辞めたらタダの人”ではダメなんです。現役中に培った経験や知識があるが、そこに信念が加わればセカンドステージでも人を感動させられる」

 引退後の村田氏の生き方は、まさにその言葉通りに見えた。

撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2022年12月2日号

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