大相撲九州場所のウラで、前代未聞のトラブルが起きている。7月の名古屋場所で初優勝を果たした逸ノ城(前頭2枚目)と師匠である湊親方(元前頭・湊富士)の確執が深まり、会話すら通じない異常事態に陥っているのだ。逸ノ城の酒乱を問題視していた親方とおかみさん。その後、禁酒を誓った逸ノ城に、ひとり暮らしを許可したが──。【全3回の第2回。第1回から読む】
弁護士から弁護士へ連絡
ひとり暮らしを始めた当初は真面目に朝稽古にも通っていたが、今年2月のある日のことだった。湊部屋関係者が語る。
「連絡もなしに朝稽古に来なかった。ちょうど雪が降った日で、親方やおかみさんは途中で転んだのではと心配して連絡を取ろうとしたがつながらない。ようやく夕方に連絡が取れたら“酔っぱらって起きられなかった”というんです」
当然、親方は叱責し、誰と飲んでいたのかもわからないので、「コロナに感染していたら困るから、しばらく部屋に来るな」と言い渡したという。
その数日後、部屋に姿を見せた逸ノ城は、1枚の紙を手にしていた。
「いきなり“弁護士を立てました”と言い出した。手にした紙には“今後、逸ノ城に話がある時は弁護士を通してください”といった文言があり、弁護士の連絡先が書かれている。稽古をサボったことを謝れば済む話なのに、その日から親方やおかみさんが何を聞いても“弁護士がいないと話しません”“弁護士を通してください”としか返さなくなってしまった」(同前)
親方と力士の関係として、前代未聞の状態である。稽古指導を含め、あらゆるやり取りが「弁護士を通じて」のものになってしまったというのだ。
湊部屋後援会幹部はこう嘆息する。
「親方とおかみさんは途方に暮れてしまったし、我々後援会関係者の説得にも耳を貸さない。朝稽古には来るが、親方がアドバイスをしても返事もしません。協会からの事務連絡を伝えようとしても“弁護士を通してください”ですからね」
そのうち親方も声を掛けなくなったという。
「親方から伝えることがあれば、まず部屋の弁護士に伝え、そこから逸ノ城の弁護士に連絡し、それが逸ノ城に伝えられる。逸ノ城が言いたいことがある場合は逆ルートでそれをやる。まさに“伝言ゲーム”だ。誰に弁護士を紹介されたかもわからないし、弁護士に角界の慣例などのニュアンスが伝わっているか、親方にもわからないようだ。逸ノ城は日本語が未熟で、双方の弁護士を通じたやり取りで意思疎通ができるとは思えない」(同前)