福岡で開催中の大相撲九州場所では、序盤で早々に勝ちっ放しの力士がいなくなって優勝争いが混迷を極めている。土俵上での話題とは別に注目を集めているのが、本場所直前に湊親方(元前頭・湊富士)との確執が発覚した逸ノ城(前頭2枚目)だ。師弟の間では会話もない異常事態になっているというが、逸ノ城は報道陣に対しても口をつぐみ、緊迫した状況が生まれている。
逸ノ城と湊親方との間では、弁護士を介しての会話しかないという状況のまま九州場所の初日を迎え、福岡の宿舎でも逸ノ城は稽古場に姿こそ見せるものの、朝稽古が終わったらちゃんこも食べずに部屋に籠り、会場の福岡国際センターに向かう時間になると黙って車に乗り込むという日々が繰り返されている。師弟関係に亀裂ができた状態で臨む逸ノ城にとって、長い15日間となる。
九州場所ではコロナ対策のため、場所入りする力士は来場者が待ち受ける正面玄関からではなく、関係者の駐車場側の通用門にタクシーや車を横付けして館内に入っていく。そして、相撲を取り終えた力士は再び通用門から帰っていく。
コロナ前は東西の支度部屋はもちろん、関係者の駐車場にも報道陣が自由に出入りできたが、力士との接触を避けるために今場所も立ち入りができないように警備員が監視している。取組後の取材はリモートで行われるため、力士はマスコミや来場者と直接顔を合わせることはない。
逸ノ城は初日に先場所で優勝した玉鷲を押し出しで破り白星スタートとなったが、取組後のリモート取材には応じず。「マスコミと接触をしないまま福岡国際センターを出ようとしたところ、リモート取材に応じなかったこともあって、関係者の駐車場を出たところで報道陣に囲まれてしまった」(協会関係者)というのである。
会場周辺の道路は打ち出し後30分間は通行止めになるため、空車のタクシーを探して付き人とひたすら歩く逸ノ城。それを追いかける報道陣という状態が5分ほど続き、大通りに出ると、タクシーを見つけて宿舎に向かったが、「この間に一言も口をひらくことはなかった」(同前)という。
「そうした事態があったために、翌日からは初日に歩いて行った方角とは逆方向に行って会場から200メートルほど離れた都市高速入口近くにタクシーを予約して乗り込むようになった」(前出・協会関係者)