精神科医の和田秀樹氏が書いた『80歳の壁』がベストセラーになっているが、健康寿命を延ばすためには何を心がければ良いか─それを知る“生き証人”が80歳を越えた今も現役で活躍する医師たちだ。糖尿病専門医で公立病院勤務の松山辰男氏(82)は、健康の秘訣は“呼吸”だと語る──。
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82歳になった今も、週5日は公立の病院にフルタイムで勤務し、休みは土日だけです。勤務日のうち週4日は裏方の検査に関わる仕事をし、1日は担当してきた患者さんを継続して診ています。
健康のために「これは絶対!」と続けたことはありませんが、結果的によかったと思える習慣はあります。
まず、私は幼い頃から病弱で、小学校は7年通いました。自分の体は丈夫ではないとわかっていたので、無理をしないようにしてきました。
タバコも吸わず、お酒も嗜む程度で、必要以上に身体を鍛えることもなく、ハードな負荷をかけなかった。仕事は12時間勤務が続くなど大変な面はありましたが、自分の身体に対する傲慢さや油断はなかったですね。仕事以外では無茶をしないよう生きてきました。
あとは、学生時代に始めた趣味の尺八を60年以上続けています。今も年に4~5回はステージで吹く機会があります。瞬間的に息を吸い、ゆっくり吐き続けることで音を出す尺八は、ヨガの呼吸管理に近いようです。この呼吸を意識した活動が、健康に寄与したのかもしれません。
最近は年相応に人の名前が出てこなかったりしますが、生活に困るほどではない。趣味の尺八を通して人と関わることが、認知機能の維持にも一役買っているようです。
実は30年ほど前、就職したばかりの長男が事故で亡くなりました。以来、毎朝仏壇でお経をあげていますが、そうして声を出すことが口の運動になっていると思います。