特殊詐欺の被害額はピークの2014年時点で500億円超だが、ほとんどが被害者に弁済されることなく、この世のどこかへ消えている。その金は、いったい何に使われていったのか。ライターの森鷹久氏が、犯罪収益の使い道についてレポートする。
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いわゆるオレオレ詐欺に代表される「特殊詐欺」の認知件数や被害額は、平成終盤をピークに右肩下がりの傾向にある一方で、依然として年間一万件以上の事案が報告されている。テレビニュースや新聞等では、特殊詐欺犯人が検挙されたと毎日のように報じているが、実は逮捕されるのは特殊詐欺に手を染めた大多数のうちの、ごく一握りだ。では、法で裁かれないまま特殊詐欺の世界から離れた人たちは、法で裁かれずとも反省して自分を律して生きているのかといえば、「更生」とはそんなに簡単なことではないらしい。真面目に生きて仕事をしているふりをしながら、平然と給付金や協力金を詐取するという反社会的行為をして、再び逃げおおせようとしている。
「ああ、詐欺ラーメンね」
千葉県内の繁華街──次々にお客さんが入っていくラーメン店を眺めながら、現在は土木作業員として働く男性・トヨミ氏(仮名・40代)は苦笑交じりに言った。視線の先にあるラーメン店の経営者は、逮捕こそされなかったが、特殊詐欺グループを率いていたことで知られた男なのだと明かす。トヨミ氏は、以前の仕事や遊び仲間たちとの繋がりから、羽振りがよかった彼が何を生業にしているのかを知ることになった。
「ラーメン店店主は元々地元の暴走族で半グレ。10人ぐらいのグループでリフォーム詐欺やオレオレ詐欺をやって、相当儲かったと聞きました。彼が駒として使っていた受け子は何人かパクられましたが、リーダー格だった彼まで捜査の手が及ぶことはなく、5年ほど前に詐欺からは一切手を引き、飲食をやると言ってたそうですよ」(トヨミ氏)
現在40代とみられるラーメン店店主は、30代の頃に詐欺で荒稼ぎし、地元暴力団などにも「上納金」を納め、反社組織とも友好関係を築いていた。好調に稼いでいたので、しばらく詐欺を生業にするものだと思われていたが、周囲で逮捕者が続出すると、逃げ出すように足を洗った。その後、現在のラーメン店を開いたのだが、その開店資金となったのはもちろん、詐欺で得られた金だと言われている。一見すると、真面目になったふりをしているようにも見えたが、男を信用してはならないと、トヨミ氏と親しい人たちは見ていた。
「以前、過去を知るチンピラが恐喝したそうなんですが、もう今は一般人だからと開き直り、警察に逃げ込んだ。逮捕されてないだけの詐欺師のくせに、その件をSNSで公開していて被害者だと強調していて呆れましたよ。しかも、詐欺をやっていた過去は”ウソ”と触れ回っているようです」(トヨミ氏)