2020年の国勢調査によると、世帯人員別の一般世帯数は単身(1人暮らし)が最も多く2115万1000世帯で、全体の4割近くを占めている。政府には「孤独・孤立対策」の担当大臣が設置され、たびたび有識者会議が開かれている。「孤独」「孤立」は現代の社会問題の大テーマと言っていい。そうした世相の中で、かつて漂泊・独居しながら「孤独」を磨き続けた俳人たちの俳句が話題となっている。“独りの時代”に心に響く名句とは──。
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新型コロナウイルス禍により、対話や移動が憚られ、人と人のつながりが希薄になった。そんな中で、“放浪の俳人”と呼ばれた種田山頭火と尾崎放哉の自由律俳句がにわかに脚光を浴びているという。
「どうしようもない私が歩いてゐる」 山頭火
「一日物云はず蝶の影さす」 放哉
山頭火は、今年12月3日が生誕140周年にあたり、それに関連する催しなども開かれている。2020年12月から『新編 山頭火全集』(春陽堂書店刊)の刊行が始まり、全8巻が今秋に出揃った。
放哉についても、自由律俳人のせきしろ氏が放哉の句に着想を得たエッセイ集『放哉の本を読まずに孤独』(同書店刊)を今年8月に出し、話題になっている。
そのほか、『山頭火と放哉』の著書がある渡辺利夫元拓殖大学総長は、新聞への寄稿の中で、山頭火や放哉の俳句の「効用」について解説している。
〈私は不安や抑鬱の時には、書架から山頭火の句集を取り出し、付箋のついたページを開き傍線の引いてある句に目をやり、心の中でこれを繰り返す。[中略]人間のどうしようもない寂しさと哀しみを歌うこれらの句には、私どものつらい気分を慰撫する効用が確かにある。〉(産経新聞2022年5月13日付)
俳句のような詩歌をどう鑑賞するかは、個人によりさまざまだろう。それでも、時に自虐的であったり、ユーモラスに思えたりする自由律俳句には、心を軽くさせる働きがあるのかもしれない。