ライフ

山頭火、放哉…“放浪の俳人”の名句がコロナ禍の心に沁みる

種田山頭火(左)と尾崎方哉(写真提供:「山頭火」春陽堂書店、「方哉」鳥取県立図書館)

種田山頭火(左)と尾崎放哉(写真提供/山頭火:春陽堂書店、放哉:鳥取県立図書館)

 2020年の国勢調査によると、世帯人員別の一般世帯数は単身(1人暮らし)が最も多く2115万1000世帯で、全体の4割近くを占めている。政府には「孤独・孤立対策」の担当大臣が設置され、たびたび有識者会議が開かれている。「孤独」「孤立」は現代の社会問題の大テーマと言っていい。そうした世相の中で、かつて漂泊・独居しながら「孤独」を磨き続けた俳人たちの俳句が話題となっている。“独りの時代”に心に響く名句とは──。

 * * *
 新型コロナウイルス禍により、対話や移動が憚られ、人と人のつながりが希薄になった。そんな中で、“放浪の俳人”と呼ばれた種田山頭火と尾崎放哉の自由律俳句がにわかに脚光を浴びているという。

「どうしようもない私が歩いてゐる」 山頭火

48歳、阿蘇山にて行脚姿の山頭火(写真提供:春陽堂書店)

48歳、阿蘇山にて行脚姿の山頭火(写真提供/春陽堂書店)

「一日物云はず蝶の影さす」 放哉

39歳の放哉。神戸・須磨寺大師堂の前で(写真提供:鳥取県立図書館)

39歳の放哉。神戸・須磨寺大師堂の前で(写真提供/鳥取県立図書館)

 山頭火は、今年12月3日が生誕140周年にあたり、それに関連する催しなども開かれている。2020年12月から『新編 山頭火全集』(春陽堂書店刊)の刊行が始まり、全8巻が今秋に出揃った。

 放哉についても、自由律俳人のせきしろ氏が放哉の句に着想を得たエッセイ集『放哉の本を読まずに孤独』(同書店刊)を今年8月に出し、話題になっている。

 そのほか、『山頭火と放哉』の著書がある渡辺利夫元拓殖大学総長は、新聞への寄稿の中で、山頭火や放哉の俳句の「効用」について解説している。

〈私は不安や抑鬱の時には、書架から山頭火の句集を取り出し、付箋のついたページを開き傍線の引いてある句に目をやり、心の中でこれを繰り返す。[中略]人間のどうしようもない寂しさと哀しみを歌うこれらの句には、私どものつらい気分を慰撫する効用が確かにある。〉(産経新聞2022年5月13日付)

 俳句のような詩歌をどう鑑賞するかは、個人によりさまざまだろう。それでも、時に自虐的であったり、ユーモラスに思えたりする自由律俳句には、心を軽くさせる働きがあるのかもしれない。

関連記事

トピックス

2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
警視庁が押収した車両=9日、東京都江東区(時事通信フォト)
《”アルヴェル”が人気》盗難車のナンバープレート付け替えで整備会社の社長逮捕 違法な「ニコイチ」高級改造車を買い求める人たちの事情
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン