【著者インタビュー】早見和真さん/『新! 店長がバカすぎて』/角川春樹事務所/1760円
【本の内容】
舞台は東京・吉祥寺にある「武蔵野書店」吉祥寺本店。2019年に出版された前作『店長がバカすぎて』の最後、社長の出身地・宮崎県の山奥にある店に「店長代理補佐」として異動した店長・山本猛が3年ぶりに吉祥寺本店に店長として戻ってきたところから始まる。相変わらず無駄に長い朝礼、新しく入ったアルバイト……そうした中で、書店員・谷原京子は今日もおおわらわ。社長の代替わり、お客様のクレーム、そして職場の人間関係のトラブル。すべての本好きに読んでほしい、もっと本が好きになる一冊。
この本の売れない時代に、つまらないことを気にしても
書店を舞台にした『新! 店長がバカすぎて』は、大ヒットした『店長がバカすぎて』に続く、早見さんとしては初めて手がけるシリーズ作品になる。
「前から、シリーズを書いてみたい気持ちはあったんです。ただ、1作目が売れた気配もないのに2作目を書くことはしたくないので、貪欲に1作目を売ろうと考えました」
出版社の営業任せにするのではなく、売るために自分から動いたそうだ。
「書店で目をひくことを考えてタイトルをつけましたし、タイトルのキツさを和らげるために、装丁はできるだけポップにかわいくしてほしいとお願いしました。本当は、書店を舞台にすることも、迎合してると思われるんじゃないかと抵抗があったんですけど、この本の売れない時代に、つまらないことを気にしてもしかたないと開き直りました」
書店員の投票で選ばれる本屋大賞は、本の売れ行きを大きく左右する。本屋大賞を介しての利害関係がどうしても生まれてしまうので、本来、同志であるはずの書店員と親しくなることへのためらいが強かったと言う。
その気持ちが、7年前に愛媛に移住して変わった。
「何店か書店回りをしたときに、本当に優秀な女性の書店員さんと知り合って。『店長』の企画が持ち上がる前ですけど、自分が信頼する出版社の営業担当者に紹介して、自分でも月に一度は飯を食うようになりました。彼女が組織への不満や怒りを語ってる瞬間、聞いてるぼくは大笑いしている、みたいなことがたびたびあって。チャップリンが言う、『人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ』を地で行く感覚ですよね」