稲垣吾郎(48才)が今泉力哉監督と初タッグを組んだ映画『窓辺にて』が好評だ。公開御礼・全国生中継つき舞台挨拶も実施され(11月17日)、稲垣、出演者の一人である中村ゆり、今泉監督が登壇。
稲垣が映画内の自身について、「演じてないんじゃないかな」と思うほど、また周囲からも「演じてないんじゃないの?」と言われるほど、自分に近い役だった、と語った。
それほど、彼を中心に、どこかにありそうで、たぶんどこにもない、そんな豊穣な人間ドラマが綴られている作品である。
本作は、『愛がなんだ』(2019年)や『街の上で』(2021年)などの代表作を持つ今泉監督のオリジナル最新作。来年は有村架純主演の『ちひろさん』の公開も控えている、いまもっとも新作が期待される今泉監督と、朝ドラへの出演をはじめ、映画や舞台での主演が続くなどアクティブな俳優活動を展開する稲垣との幸福な初タッグとなった。ウィットに富んだ会話の応酬や軽妙洒脱な展開の連続に魅了される作品だ。
あらすじはこうだ。かつて『STANDARDS』という小説を世に出し、現在はフリーライターとして活動している市川茂巳(稲垣)。彼はある日、とある文学賞の授賞式で高校生作家の久保留亜と出会う。彼女の書いた小説『ラ・フランス』に惹かれた茂巳は、主人公のモデルとなった人物に会わせてもらうことに。その一方で茂巳は、ある問題を抱えていた。編集者である妻の紗衣が、彼女の担当する人気小説家と浮気していることを知っていながらもそのことを言い出せない日々を過ごしているのだ。しかも彼は、妻の浮気を知ったときの自分の感情についても悩んでいる。そんな茂巳の元にさまざまな者たちが現れては、人縁関係が複雑に絡み合っていくーー。
若手からベテランまでのユニークな俳優陣がチャーミングなキャラクターたちに扮し、独特な世界観を構築している本作。茂巳とともに穏やかな時間を過ごす妻・紗衣(中村ゆり)は荒川円(佐々木詩音)と不倫関係にあり、この二人の関係が茂巳にとって“ある種”の悩みのタネとして存在する。
そんな彼の前に現れるのが、どこかミステリアスな雰囲気を持った高校生作家の久保留亜(玉城ティナ)。彼女のあけすけで大人びた言動が、茂巳の日常にゆるやかな変化をもたらす。
久保の「ラ・フランス」の主人公のモデルとなった何人かの人物の一人である恋人の優二(倉悠貴)は不良じみた見た目をしているが純粋な青年で、もう一人のモデルである久保の伯父・カワナベ(斉藤陽一郎)は俗世間をでの生活を捨てて山小屋で暮らしている。茂巳を慕う友人のマサ(若葉竜也)とその妻・ゆきの(志田未来)もそれぞれに問題を抱えており、少なからず彼に影響を与える存在だ。