ウクライナへの侵攻を続けるロシア。強権的な政治手法を続けるプーチン大統領に、国際社会はどう向き合うべきなのか。20世紀の独裁者について考察するシリーズを上梓する国際政治学者・舛添要一氏は、最新刊『スターリンの正体 ヒトラーより残虐な男』のなかで、プーチン大統領と、かつて同国で恐怖政治を敷いたソ連の独裁者・スターリンとの関係について次のように指摘する。
〈ロシアの指導者プーチン大統領は、ソ連邦崩壊によって失われた「ロシア帝国」を再興しようとしています。彼は、第二次世界大戦に勝利し、領土を拡張し、ソ連邦を世界の大国に押し上げたスターリンを尊敬し、スターリン批判を禁止しています〉(舛添要一『スターリンの正体』)
しかし、プーチンの「スターリン崇拝」の姿勢は大きな問題を孕んでいる。
〈自由な民主主義にとって、言論を弾圧し、反対派を粛清する独裁制、全体主義は恐るべき敵です。古代から、独裁者は存在し、過酷な統治を行ってきましたが、20世紀にもなって、その独裁者が再登場し、人権を蹂躙(じゅうりん)したのです。ムッソリーニ、ヒトラー、スターリンがその典型です。[中略]
暴君たちは、暴力によって敵の息の根を止めますが、処刑した者の数で群を抜いているのが、ソ連の独裁者、スターリンです。ヒトラーは600万人のユダヤ人を虐殺しましたが、スターリンは1000万〜2000万人を死に追いやったと言われています。数字はあくまでも推定ですが、ヒトラーを上回る暴虐ぶりです。殺した人間の数で序列をつければ、1位がスターリン、2位がヒトラー、3位がムッソリーニです〉(前掲書)