北朝鮮の政府機関紙「労働新聞」が世界を驚かせた。11月19日付の同紙は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射現場の視察に訪れた金正恩氏と娘のツーショットを掲載。手を繋いで歩く姿や、金正恩氏の妻・李雪主氏も交えた親子3人の写真も公開された。
「夫婦の間には3人の子供がいるとされており、公開された娘は2番目の子供だとみられています。名前は『ジュエ』というそうです」(全国紙記者)
金正恩氏の子供の存在が公表されるのはこれが初。海外メディアではさっそく「後継者候補」とも報じられた。
金正恩体制の北朝鮮では女性の登用が目立ち、妹の金与正氏が労働党副部長に、崔善姫氏が外相に就いている。
もし将来的に娘が後継者になれば、複雑なのは与正氏の立場だ。
2020年4月に金正恩氏の健康不安説が流れた際は、与正氏が後継者候補として名前が挙がったほど、現体制で盤石の権力を持つ。それだけに近い将来、与正氏と娘の間で後継者争いが起きるのではないか──そう見る向きがあるのだ。
この点について、朝鮮半島情勢に精通する大韓金融新聞東京支局長の金賢氏が解説する。
「いまは与正と雪主の関係は良好だとされており、その娘と権力闘争を繰り広げるのは考えにくい。万一、正恩が不測の事態で数年内に死ぬようなことがあれば、与正が後継者となりますが、娘とはうまく協力体制を築くでしょう」
金正恩氏は2021年12月にも激やせ姿が捉えられ、重病説が再燃した。与正氏が金王朝を継ぎ、まだ幼い金正恩氏の子供たちをまとめ上げて女帝になる可能性はゼロではない。
一方、金正恩氏が健康不安説を払拭して長期体制を築けば、別の問題が浮上する。
「成人となった子供たちのいずれかが後継者となるでしょう。ただ、与正にも子供がおり、ゆくゆくは政権の中枢に座るはず。正恩の子供と与正の子供がうまくいくかは読めません」(金氏)
娘の公開によって、早くも“次代”の権力闘争の火種が蒔かれたのかもしれない。
※週刊ポスト2022年12月9日号