年末のNHKの看板番組「紅白歌合戦」の今年の出演者が発表され、“シニア視聴者切り捨て”と波紋を広げている。
韓国のK-POPアイドルが5組出場し、そのうち2組は日本ではほぼ新人。ジャニーズも6組、全出場歌手42組中、初出場組が10組を占めた。若者世代には知名度があっても、シニア世代には聞いたこともないユニット名が並ぶ。
対照的に演歌・歌謡曲歌手は減り続けて7組(氷川きよしは特別枠)と過去最低に。中高年世代から出場が期待されたデビュー50周年の松任谷由実、昨年辞退した松田聖子らの名前はなかった。
コラムニストの亀和田武氏は“紅白卒業”を決めたという。
「僕は73歳になるけど、今年の紅白の出場者を見たら馴染みのない人ばかり。もう、紅白は見なくていいかなと思っています。寂しくもあるが、いい区切りかもしれない」
亀和田氏のように「紅白も遠くなりにけり」とお嘆きのシニアは多いのではないか。
全国には大晦日はじいちゃん、ばあちゃんも孫もテレビで紅白を見るという家庭は今なお少なくないはずだが、NHKはなぜ、若い世代向けの歌番組へと変質させたのか。
元NHK職員で阪南大学教授(放送文化論)の大野茂氏が紅白の「若者シフト」についてこう語る。
「NHKでは今年度上半期だけで受信料の契約解除が約20万件に達した。年間計画で見込んでいた減少幅は年間10万件なので、予想の4倍のペースとなり大きなショックを受けたはずです。受信料は高齢者世代に支えられている。若い世代はネットで動画を見るから、テレビを持っていない人も多い。当然、受信料も払っていない人が多いが、NHKにとっては、若い世代に見てもらわないとこの先、受信料を取れるところがなくなっていく。
そうした若者たちを一番引っぱりやすいのは長い話数や長時間見続けなくてはならないドラマやドキュメンタリーではなく、自分の好きなミュージシャンが出演する音楽のスペシャル番組なのです。そのために紅白を若者向けにシフトさせているのでしょう」
だが、受信料を払っている中高年視聴者にすれば、払っていない世代に見てもらうために自分たちが切り捨てられるのは納得がいかない。
では、世代によって受信料の支払い率はどのくらい違うのか。
「受信料は世帯別にお支払いいただいており、家族構成など細かく世代別での支払い率の調査はしておりません。ただ、受信料をお支払いいただいている率が高いのはシニア、中高年世代だと思います」(NHK広報局)