これまで日本人のNPB経験者で医師になった者はおらず、元DeNAの寺田光輝が2021年10月、東海大学医学部に秋から編入学した際は、話題をさらった。
「実家が医師家系ということもあって、頭のどこかで“医者”の文字はありました。ただ野球をやっているときはそれを忘れ、たった2年のプロ生活でしたが完全燃焼しました」
2017年にDeNAに6位で指名された男は、2019年に戦力外通告後、1年半の猛勉強の末、見事医学部に合格。医師になるため勉学に励んでいる。
一方、元ロッテの島孝明は、高卒3年目の2019年オフに、当時の吉井理人投手コーチ(現ロッテ監督)に相談した結果、自らの意思で退団を申し入れた。そして、その翌年4月に國學院大學人間開発学部に入学する。
「ルーキーイヤーにイップスにかかってしまい、3年間苦しみました。いまは、バイオメカニズムの分野を研究しながら運動心理学も学んでいます。目標は研究者です」
(文中敬称略)
【プロフィール】
寺田光輝(てらだ・こうき)/1992年生まれ、三重県伊勢市出身。独立リーグ・石川ミリオンスターズに2年間在籍し、2017年横浜DeNAベイスターズにドラフト6位で入団、19年引退。その後、2021年に東海大学医学部に編入学。
島孝明(しま・たかあき)/1998年生まれ、千葉県佐倉市出身。東海大学付属市原望洋高校で3年生の春に153キロを投げ、一躍注目を浴びる。2016年ロッテにドラフト3位で入団。2019年に現役引退を発表。2020年より國學院大學に進学。
【取材・文】
松永多佳倫(まつなが・たかりん)/ノンフィクション作家。1968年、岐阜県生まれ。琉球大卒業後、出版社勤務を経て執筆活動開始。『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)など著書多数。ビジネス書籍『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』がKADOKAWAより発売中。
写真/木村圭司
※週刊ポスト2022年12月9日号