日本の予選グループ1位通過を実現させた立役者の1人は、GK・権田修一(33・清水エスパルス)だろう。「日本の守護神」として3試合を通して安定した活躍を見せ、特にドイツ戦ではスーパーセーブを連発、MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選出された。
その権田が、劇的な勝利を飾ったドイツ戦の直後、日本のある人物に対して以下のようなメッセージを送っていた。
〈カタールに入ってからリーグ戦で力み気味だった身体をフットボールネーション見ながら整えました笑〉
メッセージの受信者は漫画家・大武ユキ氏。『ビッグコミックスペリオール』で連載中のサッカー漫画『フットボールネーション』の作者である。
同作は、運動科学総合研究所・高岡英夫氏が監修しており、もも裏の筋肉・腸腰筋などインナーマッスル主導の動きや股関節の重要性など、身体面に注目して描かれるサッカー漫画だ。「日本をフットボールネーション(=サッカー先進国)にするには戦術や名監督より、世界基準のフィジカルとセンスを持った選手を育てることが必要」というテーマを掲げ、岡崎慎司(シントトロイデン)、中村憲剛氏(元川崎F)など日本代表レジェンドを筆頭に選手や関係者にもファンが多い。権田も単行本(9集)の帯にコメントを寄せたことがあり、愛読者の1人として知られている。
大武氏に話を聞くと、「作品が権田選手の活躍に少しでもお役に立てたのなら、とても光栄なこと」と喜びのコメントを寄せてくれた。
「権田選手は大舞台でも非常にリラックスしているように感じられます。メッセージで『力み気味だった身体を整えた』と仰っていましたが、その言葉通り“硬さ”がない。だからこそ動き出しが速くて、危なげないプレーができているのではないでしょうか」(大武氏、以下同)
実は大会前、大武氏はスポーツ紙の取材に対し、「今大会の注目は権田選手と遠藤(航)選手」と語っていた(11月21日付スポーツニッポン)。権田に注目した理由は、6月に観戦に行ったブラジルとの親善試合での印象が非常に良かったからだ。
「いい選手はフォトジェニック」──これは作品のキーワードで、大武氏の持論でもある。試合に出かけては、作品資料のため自身で何千枚も写真を撮る大武氏の中でも、権田はかなりフォトジェニックな選手なのだという。