組長からの命令は「絶対」(写真/イメージマート)
警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、究極の上意下達な組織である暴力団において、組長から襲撃命令を受けたある幹部のエピソードだ。
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極道は、組長の言うことが絶対という世界に生きている。「やれ」と言われればできないとは言えず、どうやったらやれるかを考えるのみ。ただ1つだけ、やれと言われたことをやめる方法がある。
ある暴力団傘下の組同士の勢力争いで、それは起きた。
「あいつ、やってしまわなあかんな」
組長のその一言で暴力団幹部A氏らは、その日から某組の組長を狙い始めた。
理由は上層部の組と、某組の組長が不動産売買をめぐって反目したことにある。揉め事で組織内には不協和音が生じ、組同士がガタガタしだした。上層部の組側にいるA氏の組の組長は、それが許せなかったのだ。
「思い知らせてやらんと。やってしまえ」
やってしまえとは襲撃しろということだ。A氏らはまず、いつどこで襲うのがいいか、某組組長の行動確認を行った。
狙いやすいのは組事務所か自宅に出入りする時だが、某組の事務所は繁華街のほぼ中心に位置し、事務所前の道路は一方通行だった。だが自宅は、それ以上に面倒な場所にあった。狭い路地や一方通行の道が入り組んでいる、坂の多い高級住宅地だったのだ。
「時間によって繁華街は人出が多くなる。狭い路地では車を駐車できないし、坂があれば逃げるのも難しくなる」とA氏。
ヤクザ映画などでは、よく組長の行きつけの店などで襲撃するシーンがある。現実にも似たようなことは起きていて、最近では、10月26日の白昼、岡山市内の理髪店で、暴力団組織「池田組」の組長、池田孝志が散髪中に襲撃された。襲撃した男は六代目山口組の山健組系妹尾組の幹部。その時の様子はニュースでも報じられた。
池田組は神戸山口組から脱退した独立組織であるが、「六代目山口組から神戸山口組が分裂した際、ほかの組を引っ張るのに金を出したのが池田組。池田は全国にいくつもの不動産を持ち、相当の金を持つ神戸山口の資金源だった。妹尾組は六代目山口組に出戻った山建組系。出戻りだから、少しはいいところを見せなければと焦ったのではないか」とA氏はいう。
襲撃した妹尾組幹部は、理髪店の前に車を停め、催涙スプレーとサバイバルナイフを手に店に乱入したが、池田組組長のボディガードの組員らに取り押さえられた。池田組組長は無事だった。