支持率下落はとどまることを知らず、「内閣再改造」や「年始解散」説が駆け巡るほど政権は混乱を極めている。そんななか、崖っぷちの岸田文雄・首相は、耳を疑うような窮余の一策を考えているという。
サシで何を話したか
秋葉賢也・復興相の「4人目の閣僚辞任」をめぐって政局が緊迫するなか、注目の会談が行なわれた。11月28日、岸田首相は「最大の政敵」としてその動向が関心を呼んでいる菅義偉・前首相とサシで会談した。
政界きっての酒豪として知られる首相は、下戸の前首相とはもともと肌が合わない。だから2人で会う時は宴席ではなく、議員事務所のソファーで堅苦しく向かい合う。時間はわずか15分ほど。岸田首相はそそくさと菅氏の部屋を後にした。
「最近のいろいろな動きについて報告するとともに、意見交換した」。岸田首相は記者団にそう語ったが、表情は硬いままだった。
瀬戸際に立たされている岸田首相は、このところ連日、自民党の有力者たちと個別に会合を重ね、最後が菅氏だった。
当日、岸田首相は臨時国会の審議を終え、自民党本部で開かれた旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済法案についての党役員会に出席。
そこから急いで衆院議員会館の菅事務所に向かい、会談後、わざわざ自民党本部に引き返して役員会で顔を合わせたばかりの麻生太郎・副総裁、茂木敏充・幹事長の2人と再び会った。菅氏との会談の“感触”を伝えるためだったとされる。
「総理は党首脳から『菅さんにも事前に相談したほうがいい』と忠告を受けて会いに行った」(自民党幹部)
岸田─菅会談でどんな話し合いが行なわれたのか。菅氏サイドの証言だ。
「岸田さんからは増額する防衛費の財源問題と、旧統一教会の被害者救済法案について説明があったようだが、どちらも方針は決まった後だ。正式決定前に報告することで菅さんを蔑ろにはしていないことを示したつもりかもしれないが、菅さんにすれば“何で今ごろそんな話をしに来たのか”という気持ちだろう」
だが、岸田首相の本音は別にあった。首相側近はこう言う。
「総理の菅事務所訪問の本当の目的は内閣再改造について菅さんの意向を探るためだった。反主流派を束ねる菅さんを閣内に迎えることができれば、難局を乗り切れるが、入閣の担保がなければ再改造に踏み切るのは難しい。しかし、総理は断わられることを恐れて、話を切り出せなかったようだ」
会談は完全にすれ違いに終わったが、岸田首相の次の一手、菅氏との関係修復が政権の命運を握っているのは間違いない。