ライフ

感染したら何十年も体内に居座る「結核菌」 現在でも国内死亡者数は年2000人弱

現在も油断できない結核の脅威とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

現在も油断できない結核の脅威とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、「結核」についてお届けする。

 * * *
 結核はエジプトのミイラにもその病痕が認められるほど、人類の歴史とともにある病気です。

 日本では、特に明治維新後の産業革命期以降から国内で蔓延し、国民病とも亡国病ともいわれ、1950年代まで長く日本人の死亡原因の1位を占めていました。現在の日本でも、年間2万人弱の新規感染者が発生し約2000人弱もの人が死亡している病気です。

 受診、診断の遅れなどによって、学校や職場等での集団感染も起こっています。結核の治療を始めた患者の9%が命を失っているなど、治療の遅れは重症化にもつながり、コロナ禍でコロナ以外の病気へ目が向かなくなることで、心配される感染症です。

 結核は結核菌が空気感染で吸い込まれることで肺に入って感染します。多くの場合、免疫力によって結核菌は排除されます。排除しきれずに体に結核菌が残留しても、免疫で封じ込められて生涯にわたり発症しない人がほとんどです。

 感染しただけの状態ならば、他者にうつす心配はないのですが、体の免疫力が低下したり、抵抗力が弱まると結核菌が増え始め、発病しやすい状態になると考えられています。過去に流行していたので、高齢者には潜在的に結核菌に感染している状態の人が多くいます。高齢化社会の日本では、思い出しておきたい病気ですね。

 潜伏期間は2年以内、特に6カ月以内が多いのですが、数十年を経てから発症することもあります。咳や痰、微熱などの症状が長く続き、次第に呼吸が荒くなります。「寝汗をかく」、「食欲がない」、「痩せる」、さらにひどくなると「倦怠感」や「息切れ」を起こし、痰に血が混じりはじめます。

 結核は肺結核の他に腎臓、リンパ節、骨などを侵すこともあり、全身に感染が及ぶ場合もあることから、早期診断、治療開始が大切です。長引く咳、痰、微熱、だるさなどの症状があるなら医療機関へ。また、定期健康診断を受けて胸部X線撮影でチェックしましょう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン