10月、合同結婚式の末に生まれた小川さゆりさん(仮名)の会見中、教団から彼女の両親の署名を入れた「会見中止」を要求するFAXが届いたことは、大きな話題になった。同じ被害を生みたくないと訴える、小川さんはじめ、武田ショウコさん(仮名)、もるすこちゃんさんの3人の宗教2世の座談会が実現した。【全4回の第4回。第1回から読む】
教会を卒業しても幸せになれる
小川:私は20歳の時に親と決別しましたが、親からは時々教会の活動を伝えるメッセージが届きます。私がいまどんな思いでいるか、想像できていないんです。
もるすこちゃん:小川さんは、会見以降、教会の中では悪魔と言われていますよ。「共産党に操られている」と。
武田:私も両親との関係は壊滅的です。家出をしてからは、家賃を払えないとか、何かを滞納している時だけ連絡してほしいと伝えました。じゃないと、教会内の誰かからお金を借りてしまうから。
もるすこちゃん:父は70代で契約社員の仕事をしていますが、両親のどちらかが病気になったり、仕事をクビになったりした瞬間に生活が破綻する。両親は500万円用意していた老後資産をすべて献金してしまったんです。それでも、教会は絶対に手当てをしてくれないから、私が介護などの面倒を見るしかない。
いま被害者救済の新法案が議論されていますが、これは施行後の被害に対応するものだから、私たちの被害は現行法で対応せざるをえません。
加えて、今後同じ献金被害が繰り返されても、現状の新法案の内容では実効性がほとんどない。私たちが被害の実情を伝え続けるしかないんです。
小川:私も教会を出て自分がやるべきだと思うことはやろうと決めたので、教会をなんとかしたいと本当に思います。子供もできましたし、自分の恨みを晴らしたいとか、そんな思いだけでは到底ここまで来れないというところまで来ているので。
武田:私にはいま、幸せであるからこそ発言力もあると思う。信者の人たちも、なんとなく私たちをテレビで見て、「あの人たち、なんだか幸せそうやな」「不幸そうに見えへんな」と思って、自分たちは統一教会を卒業しても幸せになれるんじゃないかって、ふわっと思ってくれたらと、心の底から思います。こんな苦しみは私たちで終わらせなきゃいけない。
(了。第1回から読む)
※週刊ポスト2022年12月16日号