キッカーは立候補制だった。グループステージ1位通過を果たし、悲願のベスト8を懸けたクロアチア戦は、120分の激闘の末、PK戦にもつれこんだ。背番号10の南野拓実(27才)、“戦術三笘”といわれるほど4戦とも圧倒的な存在感を示した三笘薫(25才)が相次いで相手キーパーにPKをストップされる。4番手のキャプテン・吉田麻也(34才)もあえなく失敗、前回準優勝のクロアチアに敗戦を喫した。しかし、森保一監督(54才)の言葉は前向きだった。
「選手たちは本当によくやってくれました。ベスト16の壁は今回も破れなかったですけど、選手たちは新時代を見せてくれたと思います。これから先、日本のサッカーが最高の景色を願い続ければ、必ずこの壁を乗り越えられると思います」
2050年までにW杯を日本で開催し、その大会で優勝する──日本サッカー協会(JFA)が2005年に掲げた目標である。森保監督は2018年の就任会見で「日本サッカー界全体の発展につなげたい」と語り、過去最高の戦力といわれた選手たちの団結に腐心してきた。
今大会の日本代表は、海外のクラブでプレーする選手が大勢を占めた。選出された26人のうち、現在海外のクラブに所属するのは19人。海外でのプレー経験がない選手はたった4人しかいない。
海外組は、世界のスター選手と日々対峙している。優勝経験のあるドイツやスペインとの試合でも動揺を感じさせなかったのは、経験によるところが大きいだろう。一方で、海外組の多さはアジア最終予選で苦戦した理由の1つでもあったという。
「調整が難しいのです。代表チームへの合流は、だいたいが長距離移動で疲れは取れないし、時差ボケも発生する。到着後はすぐに現地の気候に合わせてコンディションを調整。クラブチームと違い戦術を落とし込む時間がない代表の試合は、体を強くぶつけたりと体力勝負な面があり、けがのリスクが高い。さらに日当は1万円程度。リスクを負って参加しても、出場時間がわずか5分、あるいは、試合に出られない選手もいる。
海外で揉まれている選手は自己主張が強くヤンチャで、中には“ベンチなら行きませんよ”と招集に応じない構えを見せたこともあったそうです」(JFA関係者)
だからこそ、森保監督は海外組とのコミュニケーションを丁寧に取り続けてきた。例えば、ドイツ戦、スペイン戦でゴールを決めた堂安律(24才)。彼は2022年3月のアジア最終予選でメンバー外に。当時、所属チームで好調だった堂安は、自身のツイッターに《逆境大好き人間頑張りまーす!あ、怪我してません!!》と投稿し、監督批判との臆測が広がった。