絵本、人形劇、アニメーションと様々な形で長年、子供たちに親しまれてきた『きかんしゃトーマス』は、架空の島を舞台に顔を持ちおしゃべりする機関車や自動車、関わる人たちを描いている人気シリーズだ。日本でもテレビ放送が断続的に30年以上、続いており子供の人気キャラクターとしてすっかり定着し、本物の蒸気機関車(SL)を見たことがない子供たちも、トーマスによって親しんでいる。そのトーマスを模した「きかんしゃトーマス号」を運行している大井川鉄道による、SLの動態保存継続についてライターの小川裕夫氏がレポートする。
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静岡県を地盤にする大井川鉄道(大鉄)は、SLの動態運転の先駆けとして鉄道ファンのみならず全国的に広く知られている。
大鉄は、今年に入って兵庫県加東市の県立播磨中央公園に保存展示されていたSLを引き取った。引き取られたSLは戦前期に製造されたもので車体は著しく劣化している。引き取った大鉄は、それらを修理して復活運転を目指す。その資金を募るため、9月20日からクラウドファンディングを開始した。大鉄のクラウドファンディングは、期限となった11月末までに8300万円超という莫大な金額を集めた。大鉄のSL復活に期待を寄せる人たちか多いことを物語る。
近年、SLは新造されない。修理のノウハウを有する工場や職人も少なくなり、交換部品も簡単には調達できなくなった。そうした事情もあり、老朽化したと判断されたSLは引退を余儀なくされる。
それまで鉄道各社は、SLを観光の目玉にして運行してきた。SLの集客力は絶大で、例えばJR九州のSL人吉、JR西日本のSLやまぐち号、JR東日本のSLばんえつ物語などは今でも人気列車として運行されている。
SLは単体では儲からなくても、東京や大阪といった大都市部から新幹線を乗り継いで現地まで足を運んでもらえばトータルでプラスになる。だから全国に鉄道網を有する旧国鉄が主にSLを運行してきた。つまり、SLは地方のローカル線に足を運んでもらうための工夫であり、ローカル線の救世主でもあった。
SLを観光列車に仕立てて集客の目玉にする動きは、私鉄にも見られる。2017年には東武鉄道がSLを復活させる。
こうしたように、一部でSLを観光列車として復活させる動きはある。それでも全体的に見れば、SLが退潮傾向にあることは否めない。そうした中において、大鉄は孤軍奮闘している。
「大鉄は多くのSLを保有していますが、現在において旅客営業として走っているのは4両です。そのほかのSLは展示用ですが、これは現役の車両が故障した際に部品を交換するためという目的もあります」と話すのは、大井川鉄道経営企画室の担当者だ。