公明党の自民党への態度が弱くなった。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の被害者救済法案をめぐる対応にそれが顕著に現われた。
この法案の正式名称は「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(案)」で、旧統一教会だけでなく、宗教法人全般が対象になる。
公明党の支持母体・創価学会にとって毎年12月は全国の学会員から集中的に寄附を募る「財務」の時期だ。コロナで寄附が減っているとされるなか、寄附の制限につながる被害者救済法の制定は好ましいはずがない。
山口那津男・公明党代表は「政治と宗教一般ではなく、明確に区別して議論を進めることが大切だ」と創価学会に影響が及ぶことを牽制するなど抵抗を見せた。
だが、法案は野党の要求も盛り込む形で修正が加えられ、マインドコントロールによる寄附についても、岸田文雄・首相が国会で「取り消し権の対象となる」と表明した。公明党は受け容れ、創価学会も法案に表立った反対をしなかった。
オウム真理教の地下鉄サリン事件をきっかけにした1995年の宗教法人法改正の際は、創価学会はじめ各宗教団体が激しい反対運動を展開した。あの時と大きく様変わりしたのはなぜなのか。『宗教問題』編集長の小川寛大氏が語る。
「オウム事件の時、各宗教団体は『我々はオウムとは違う』と法改正に反対する大キャンペーンを張ったわけです。確かにテロ組織のオウムは他の宗教団体とは異質な集団だった。しかし、今回問題になっている旧統一教会の高額寄附集めや2世問題などは、程度の差や悪質さの違いはあるにせよ、宗教団体に共通する部分もある。救済法案に反対すれば自分たちに批判が向けられかねない。
教団の組織維持の点から見ても、コロナによる生活苦で寄附が減っているなか、信者たちに『寄附を規制する法案に反対しましょう』と呼びかけると逆に不信感を買って教団離れを招くかもしれない。そうした事情は宗教界に共通している」
※週刊ポスト2022年12月23日号