日本の自衛隊は世界有数の戦力を有すると言われることもあるが、先端兵器の調達は米国に頼るところが大きい。その内実として、質の劣るものを高値で掴まされるケースも少なくない。
ウクライナでの戦闘が長期化するなか、日本を含む極東アジア情勢がきな臭くなってきた。今年、北朝鮮は弾道ミサイルなどを30回以上発射。異例の頻度で挑発を繰り返している。
また、中国当局による尖閣諸島周辺の領海侵入も今年は30回以上と頻発している。11月25日には過去最大となる76mm機関砲搭載の海警船が領海内に侵入。中国による尖閣諸島周辺の実効支配の既成事実化が懸念される。
米国防総省は11月公表の中国の軍事的動向に関する年次報告書で「中国が2035年までに約1500発の核弾頭を保有する可能性」に言及した。
周辺国のこうした状況に、日本では防衛力の強化が叫ばれている。
12月に入り、岸田文雄首相は2023年度から5年間の防衛費総額を43兆円とするよう指示した。敵基地攻撃能力を有する長距離ミサイル等の関連費用5兆円を目玉に、予算総額は現行計画の1.5倍と大幅増となる。さらにその後は、防衛費を現行の2倍に引き上げることまで検討されている。
国産の「12式地対艦誘導弾」長射程化や、島しょ防衛用「高速滑空弾」などの研究費用が含まれるが、なかでも注目されるのが、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の調達だ。2027年度までに最大500発の購入が検討され、相手の発射拠点をたたく手段とする。
トマホークは射程が1000~1600kmの精密誘導ミサイルで、1991年の湾岸戦争をはじめ、イラク戦争やシリア内戦などでも艦船や潜水艦から対地攻撃に用いられた。だが、開発から40年以上経過し、実戦での効果を疑問視する声もある。軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏が言う。
「トマホーク自体は歴史あるミサイル兵器で、今でも第一線で使用される兵器です。ただ、例えば中国やロシアなどミサイル防御システムを持つ国に対して、どこまで有効かは分析が難しい。敵基地攻撃能力として開発が進む国産の『スタンド・オフ・ミサイル』導入までの間を埋める目的で配備し、抑止力の強化とするつもりのようです」
2003年のイラク戦争では、複数のトマホークが標的を外れ、サウジアラビアやトルコなどに誤って着弾したこともある。当時、米国防総省は「標的を外れたミサイルは着弾しても爆発はしない」と事態の沈静化を図った。
※週刊ポスト2022年12月23日号