自身が権力を得るために重鎮におもねるような国会議員が多い中、どんなに批判されても、上に楯突く形になろうとも、自分たちの信念を貫いてきた政治家がいる。ウクライナ侵攻に関する発言で物議を醸してきた鈴木宗男・参議院議員(74)もその一人だ。北方領土への思い、政治の師との思い出、選挙での苦労、娘・貴子氏への期待など、時には涙を流しながらすべてを語った。【全3回の第1回】
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森元総理の発言は「当たり前」
──宗男さんは政界随一のロシア通として知られ、ウクライナでの戦闘開始後もブレずにロシア側に配慮した発言を繰り返しています。持論を曲げない理由を教えてください。
「戦争というものは、双方に言い分があるんです。どちらかを非難するよりも、双方の言い分を聞く機会をつくる。われわれが仲立ちすると呼びかけるのが、あるべきリーダーの姿だと思うんです。
ところが、プーチン大統領が『悪』、一方で、ゼレンスキー大統領は『善』という構図は公平ではない。不思議なのは、日本の新聞でも、ロシアが侵攻せざるを得なかった原因をつくったのはなにかっていう視点がないんです」
──11月には、宗男さん主催の政治資金パーティーで、ゲストの森喜朗・元首相が「ゼレンスキー氏は、多くのウクライナ人を苦しめている」と発言して、物議を醸しました。
「森総理が言わんとしたのは、外交とは約束であり、信頼の積み重ねだという当たり前のことです。よく日本の国会議員が、『われわれはウクライナ国民とともにある』って言うんですが、勉強不足です。ゼレンスキー政権がそれほどまで信頼に足るのでしょうか。ミンスク合意(※注:2014年にウクライナ東部で始まった紛争の停戦合意)を守る義務はない、と開き直ったのはゼレンスキー氏ですよ。
しかも、ブダペスト覚書(※注:1994年、ハンガリーの首都ブダペストで、アメリカ・イギリス・ロシアの核保有3か国が署名した覚書。内容はウクライナの核兵器放棄と引き換えに、安全を保障するもの)の見直しまで言い出した。だからロシアが特別軍事行動をせざるを得なかったんです」
──一方でその見方が世の主流からズレているという意識もありますよね。
「日本には北方領土問題や日ロ平和条約の締結という課題があるからです。北方領土の元島民は終戦後に1万7291人も引き揚げて、5376人が今も生きている。平均年齢は87歳です。その元島民たちと、どの政治家よりも接してきたのが鈴木宗男ですよ。
元島民が言うんです。生きているうちに自由に行き来したい、お墓参りをしたい、と。一つでも、二つでもいいから島を返してもらいたい。そして、目の前の海を使わせてほしい、と。朝も夕も、対岸からふるさとを見つめている人たちの気持ちを考えてみてください。簡単に、ロシアはけしからんと騒いでいられないです。
国益の観点からも、首の皮一枚つないでおかないと。外交は、最後まで対話の窓口を残しておくものなんです。なのに、鈴木宗男はロシアのスパイ、プーチンのポチと言われる。そんなの、冗談ポリバケツですよ!」