12月に入り、岸田文雄・首相は2023年度から5年間の防衛費総額を43兆円とするよう指示した。敵基地攻撃能力を有する長距離ミサイル等の関連費用5兆円を目玉に、予算総額は現行計画の1.5倍と大幅増となる。さらにその後は、防衛費を現行の2倍に引き上げることまで検討されている。
国産の「12式地対艦誘導弾」長射程化や、島しょ防衛用「高速滑空弾」などの研究費用が含まれるが、なかでも注目されるのが、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の調達だ。2027年度までに最大500発の購入が検討され、相手の発射拠点をたたく手段とする。だが、その一方で、開発から40年以上経過しており、実戦での効果を疑問視する声も出ている。
そうした不安の目は、「購入方法」にも向けられている。防衛ジャーナリストの半田滋氏が言う。
「日本政府は米国のFMS(対外有償軍事援助)を利用し兵器の購入を進めています。その年間契約額は、2011年度まで600億円前後で推移していたのが、2020年度には5000億円と大きく膨らんだ。この10年間、米国製兵器の“爆買い”が続いているのです」
FMSは米国の武器輸出管理法に基づき、米政府との直接取引で装備を購入する仕組み。日本以外の国も利用するが、米国製の最先端兵器を購入できる反面、米国の「言い値」で価格が決まることや「納期」の遅れ、実際の費用が見積価格を下回った時に生じる「過払金」の未精算もたびたび発生しており、会計検査院が同制度の問題点を指摘している。
「言い値」で単価が跳ね上がった例として、当初42機の購入予定が147機へと増えたF-35戦闘機が挙げられる。
「2020年7月に米国務省が追加分105機(F-35A・63機、同B・42機)の売却を承認した際の1機あたり価格は2億2000万ドル(約242億円=当時のレートで換算、以下同)でした。一方、2019年10月に米国防総省がロッキード・マーティン社と合意した478機の調達価格は1機あたり7100万ドル(約78億円)。単純比較で3倍の開きがあります。
またF-35Aは最先端のデータリンクシステムを搭載し団体戦では威力を発揮しますが、機体構造が複雑で重く、40年以上前に開発されたF-16との模擬戦で負けるなど、万能の戦闘機とは言い難い」(半田氏)