圧倒的な二枚目のルックスを武器に活躍した志垣太郎さん(享年70)。1969年に芸術座の舞台で主役デビューしてから、多くの作品に出演してきた。コラムニストのペリー荻野さんが志垣さんの生前の活躍を振り返る。
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今年3月、志垣太郎さんが亡くなっていたことがわかった。甘いマスクの二枚目として70年代から多くの作品で活躍してきた志垣さんの訃報を聞いて、今年放送されている二作品を思い出した。
一作は朝ドラ『舞いあがれ!』。ヒロイン舞がパイロットを目指して奮闘するというこの物語の概略を知った時、即座に頭に浮かんだのは、1976年の朝ドラ『雲のじゅうたん』である。
大正時代、「鳥のように空を飛びたい」と頑固な父の大反対を押し切って、飛行学校のただ一人の女子学生となった真琴(浅茅陽子)が、厳しい訓練を経て、ついに操縦士の試験に合格すると言う物語。戦前、複数実在したという女性飛行士たちをモデルにしたこのドラマは平均視聴率40パーセント超えという大ヒットを記録した。
その中で、志垣さんは真琴が憧れる海軍少尉・茅野隆二役。茅野はしょっちゅう転ぶ真琴を心配して、手を差し伸べる心優しい青年だ。転んだときに助けてくれた相手と目が合うのは、ドキドキシーンの定番中の定番。きりりとした太い眉毛と笑顔、白い制服姿がまぶしい隆二は、これぞ朝ドラの相手役という印象だった。
当時の関係者に聞くと、志垣さんを映すときは足元からパーンして颯爽としたスタイルを強調するのがお約束で、いかに隆二をカッコよくインパクトのある見せ方ができるか、アイディアを出し合っていたという。
もう一作、重要なのが1972年の大河ドラマ『新・平家物語』。平安時代の末期、平清盛(仲代達矢)を中心にした平家一門の栄華とその後の衰退を描いた大河ドラマ第10作で、志垣さんは、源義経を演じた。
義経といえば、今年の『鎌倉殿の13人』で菅田将暉が演じて話題になったばかり。この義経は黄瀬川での頼朝(大泉洋)との初対面では「兄上~」と走り寄り、大泣き。政子に「甘えていいですよ」と言われると、さっそく膝枕してもらう。経験もゼロなのに戦には自信満々で、年長武将に対しても態度がデカい。文武両道で優秀な兄弟・義円を陥れて、結果的に戦死させたり。初めて出会った娘・里(三浦透子)と朝寝をして戦に行けず…喜怒哀楽+女性好き+腹黒というこれまで見たこともなかった義経だった。