1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再出発した。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、2歳牡馬の栄誉が掛かる朝日杯フェブラリーステークス(FS)についてお届けする。
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前回、2歳牝馬による阪神ジュベナイルフィリーズは来年のクラシック第一弾である桜花賞に直結すると書きましたが、牡馬の場合はだいぶ事情が異なる。阪神のマイル戦で行なわれる朝日杯FSは、中山競馬場の2000mで行なわれる皐月賞とはレースの性格が違います。
中山の最終週に2000mで行なわれるホープフルステークスが2017年からGIになったことで、皐月賞を狙う馬はこちらを使うほうがいいのではとなりました。2018年のサートゥルナーリア、2019年のコントレイルがこのレースから皐月賞に直行して連勝しています。
さらに2018年から2020年までのNHKマイルカップの覇者がいずれも2歳暮れに朝日杯FSを使っていたことから、二つの路線が確立したように思えるかもしれません。JRA賞の「最優秀2歳牡馬」も、このどちらかの勝者が選ばれています。
しかし、来年春の3歳GIを目指す逸材が、必ずしもこのどちらかのレースに出るわけでもない。かつて朝日杯が中山で行なわれていた時代には、阪神競馬場で行なわれていたラジオたんぱ杯2歳ステークスからクラシックホースが何頭も出ていましたし、近年では暮れの2歳GIをあえて使わず、11月に東京競馬場で行なわれる東京スポーツ杯2歳ステークスや2月の共同通信杯を使った馬が好成績をあげています。
ただ、それはあくまで結果論、それらのレースを使った馬が強いから勝ったのです。ローテーションなんていうのは人間が勝手につくった概念で、どれが“王道”だなんていうのは実はないと思います。競馬予想ではたびたびローテーション別の成績がとりあげられたりしますが、それで馬の能力が変わるのなら、調教師は苦労しません(笑)。
牝馬にとっては桜花賞が大事。だから同じコースで行なわれる阪神ジュベナイルフィリーズは関連性が高いけれど、牡馬クラシックの頂点は皐月賞ではなくダービーです。だから東京競馬場のレースを使っておきたいということなのでしょう。東京の1800mで結果が出れば、中山の2000mだけではなく、東京2400mでも持つと考えられています。そして、ここでビシッと仕上げても、ダービーまでは間があるので、もう一度つくり直すことができるということです。